被害件数が増え続けている特殊詐欺。SNS上の甘い言葉で募集される「闇バイト」により”実行役”が犯罪に加担するハードルは下がっており、2025年の被害額は1414億円と過去最高にのぼった。【写真】中高生含む100人の身分証入り“自撮り写真”を送らせていたA。刑務所内で記していた直筆の「反省ノート」
「私は闇バイトの実行役を募る”リクルーター”として、100人近くの実行役を採用し、2022年に懲役2年の実刑判決を受けました」——そう語るのは、詐欺罪などで逮捕された過去を持ち、現在は契約社員として一般企業に勤める男性・A(35)だ。
「騙す側の手口を知ってもらうことで、安易な気持ちで”実行役”になってしまう人やその被害者を減らしたい」と語るA。Aはどのように詐欺に加担したのか——ライターの河合桃子氏が取材した。【前後編の前編】
Aは2021年に詐欺罪で逮捕・起訴され、2022年に懲役2年の実刑判決が下り、その後社会復帰した。逮捕当時はIT企業の正社員として勤務しており、18時の退勤後に「闇バイトリクルーター」としてさまざまな志願者を採用し、指示する活動を行っていた。
Aがなぜリクルーターになったかは後述するとして、Aの仕事内容はこのようなものだった。A本人が語る。
「私は掲示板を通じて『アジト』となる本部の人間と接触し、どのように騙すのかという手口の指示を受けていました。本部の人間は中国語のアクセントが残るような声でしたが、その素性は私自身も分かりませんでしたし、知ろうとしませんでした。
電話詐欺の手法は、”かけ子”が銀行協会か私服刑事を名乗り、電話をします。そして『口座が犯罪に利用されている』などのシナリオで話を展開し、暗証番号を聞き出したうえで、”受け子”がカードを直接受け取り金銭を詐取する、というものです。
私はその”かけ子”と”受け子”両方の募集をしていました。いずれもXやTikTok、Instagramなど複数のSNSや掲示板から募集をかけ、中国のアプリ『WeChat』や匿名性の高いアプリ『Telegram』などに移行して仕事内容を伝え、詐取金の25%を得ていました」
“かけ子”や”受け子”に志願する人物は「金銭的に困っている人が多い」という。Aはそこにつけ込み、犯罪行為であることを明示せずに実行役を募っていたという。
「応募者の多くは『今日明日で数万円の現金が必要』と切羽詰まっている人達であり、思考回路が狭まっています。正規の求人サイトに掲載されている仕事でバイトして、1か月後に支払われるまで待てないのです。
私は募集をかけていたXや掲示板などで『即日即金』『日払い』といった文言で実行役を募った。『特別公開の求人』といった文言で募集し、仕事の中身がわからないようにする。『これは詐欺です』とは説明しないんです」
甘い言葉に釣られてDMしてきた志願者に、AはWeChatやTelegramなどを使って仕事内容を伝えていた。
「仕事内容を話す時は『少しグレーなんですが』と冒頭に入れてから、『受け子』『かけ子』といった文言は使わずに淡々と流れを説明します。一連の流れを聞いているうちに『これって犯罪なのでは?』と気づくとは思いますが、1件短時間で万単位のお金が手に入ることを説明すると、ほとんどが内心で『ヤバい』と思いながらも受けてしまうものなんです。逆に言えば、それくらいお金に追われた人々を私は陥れてきました」