福岡県川崎町で2018年、長女(生後11か月)に暴行して死亡させたとして傷害致死罪に問われた無職女性の被告(29)の裁判員裁判の判決で、福岡地裁は3日、無罪(求刑・懲役8年)を言い渡した。公判では長女の頭部の傷害の原因を巡り、被告の暴行か、被告の持病で起きた事故かが争われたが、鈴嶋晋一裁判長は「(被告の)てんかん発作の事故でもあり得る」と判断した。【写真】福岡県警察本部
「被告人は無罪」
主文が言い渡されると被告はハンカチであふれる涙を押さえ、判決を聞き入った。
長女が亡くなった約3年半後の2022年2月に逮捕された被告は一貫して否認し、公判前整理手続き中だった昨年8月に9度目の請求で保釈されるまでの約3年半の間、勾留が続いた。
元夫の公判証言によると、長女が死去した翌19年に生まれた長男との面会はアクリル板越しに限られた。家族との接見禁止は昨年11月の公判まで続き、法廷で元夫や両親と顔を合わせた時には大粒の涙を流した。
公判では被告が長女に「おいしい?」と話しかけたり、体を動かす長女に「上手だね」と声をかけたりする動画を弁護側が証拠として提出し、元夫は「毎日楽しくて幸せな日々だった。(元妻は)愛情いっぱいに子育てをしていた」と証言した。被告も公判で「本当に娘を愛しているし、これからもその気持ちは変わらない」と語った。
検察側は昨年11月、冒頭陳述で元夫との不仲や育児ストレスを動機として挙げていたが、論告時には動機について触れなかった。
被告は判決後に報道陣の取材に応じ、「家族と会うことができず、子ども(長男)を自分の手で抱くこともできなかった。判決を聞いてほっとしているが、奪われた時間はもう戻って来ない」と述べた。元夫とは長女が亡くなった後に離婚したが、再婚する予定だという。
今回のように虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)が疑われる事件を巡っては近年、病気や事故の可能性があるとして無罪判決が相次いでおり、弁護人は判決後、「医学的見解をしっかり検討していればそもそも逮捕、起訴する案件ではなかった。非常に長い時間が奪われてしまったことに憤りを感じる」と批判した。
医師ら30人以上に意見を聞くなど慎重に捜査を進めた福岡県警。同県警捜査1課の園田敦次席は「判決についてのコメントは差し控える」としている。