包丁を突きつけられても「自首しよう」諭した娘「どんなに怖かったか」元少年の母の責任を母は問う 福岡

6年前、福岡市の商業施設で当時15歳の少年が女性を殺害した事件。女性の母親が、FBSの単独取材に応じました。悲しみと苦しみ、憤り。張り裂けそうな心の内を明かしました。

まだ21歳だった吉松弥里(みさと)さん。成人の日に身に着けたのは、母から譲り受けた晴れ着です。

ハレの日のアルバムには、母と娘が照れたように笑い合う写真が収められています。仲のいい母娘でした。

■弥里さんの母
「楽しい子でしたよ、明るくて。一緒にいて笑いが出てくるくらい、面白い子だった。さみしいですね。そして悲しいです。」

弥里さんは6年前、友だちと遊びに出かけた福岡市の商業施設で突然、命を奪われました。

その場で逮捕されたのは、面識のない15歳の少年でした。

弥里さんの母親は事態が飲み込めないまま、警察署で物言わぬ娘と対面しました。

■弥里さんの母
「眠っているのようにしか見えなかったぐらい、きれいな顔をしていて。弥里って頬をつけたら冷たくなっていたから、ああ、本当なんだと思って。もう、どんなに怖かったやろうかと思ったら、もう。」

弥里さんの顔や体には10か所以上、刺し傷や切り傷がありました。弥里さんの母は、あの日から毎晩のようにフラッシュバックに襲われ、うまく眠ることができないといいます。

今もそのままにしている弥里さんの部屋。ふと、帰ってくるのではないかと考えるときがあります。

■弥里さんの母
「あの子はアメリカに行きたいとか、夢を持っていました。朝、仕事に行くときに必ず起こして行っていたんですよ。おはようと言うけど返事が来ないのが一番苦しい。」

刑事裁判で明らかになったのは、弥里さんを殺害した元少年の複雑な“生い立ち”です。家庭内で繰り返し虐待を受け、養育放棄されていました。幼いころから「粗暴性」が見られ、病院や自立支援施設を転々とし、14歳で少年院に入りました。

仮退院の際、母親に身元の引き受けを拒否されたことから更生保護施設に入り、翌日、脱走して犯行に及びました。

1審の懲役10年以上15年以下の判決が確定し、元少年は現在、少年刑務所で服役しています。

娘を殺したことにどう向き合っているかを知りたい。弥里さんの母親はおととし、刑務所の担当官を通して元少年に思いを伝えました。

しかし。

■弥里さんの母
「娘に包丁を向けたとき、刺したときにどう思ったか。」
■少年
「人はあっけなく死ぬんですね。」

■弥里さんの母
「娘に抵抗されたときに、どのように思ったか。」
■少年
「偽善者ですね。」

■弥里さんの母
「娘はどんな表情をしていて、どのような気持ちだったと思うか。」
■少年
「猿の顔。」「バカですね。」

返ってきたのは、事件への後悔や反省が全く感じられない言葉でした。

娘の命を奪った責任の重さを理解してもらうため、弥里さんの母親は3年前、元少年だけでなくその親権者である母親も相手取って、7800万円余りの損害賠償を求め、民事裁判を起こしました。

母親が元少年の指導監督をして、仮退院後に受け入れ拒否をすることがなければ事件を回避できた可能性が高く、母親には監督義務違反があったなどとしています。

■弥里さんの母
「産んで育てて、犯人を育てたのは母親。15歳で義務教育も終えていない少年が犯した無差別殺人じゃないですか。親は子どもの教育に義務と責任を持たないといけない。」

しかし、去年3月。

1審の福岡地裁は、元少年に対しおよそ5400万円の損害賠償を命じた一方、元少年が少年院などに入り、事件直前までの4年半、親元にいなかったことなどを理由に、母親の監督義務違反はないとしました。

■弥里さんの母
「誰が聞いてもおかしな判決だと思うんですよ。なんで母親に責任がないんかいって。母親は、施設に預けていたんだから自分には責任はないって言い切っていますから。本当に悔しいです。」

弥里さんの遺族は、元少年の母親のみを相手取って控訴しました。

2月20日、弥里さんの母親は福岡高裁の法廷で「母親の態度に対する元少年の絶望が、この事件を引き起こした」と強く訴え、控訴審は結審しました。3月25日、判決が言い渡されます。

第二子として生まれた弥里さん。待望の女の子でした。幼いころから母に寄り添い、よく家事を手伝ってくれました。正義感が強く、周りを大切にする自慢の娘でした。

弥里さんは少年に包丁を突きつけられたとき、「自首しよう」と諭したことが明らかになっています。恐怖の中でも、相手を思いやっていた娘。その姿が思い浮かぶたびに、母の胸は張り裂けそうになります。

■弥里さんの母
「なぜ逃げなかったんだろう。なんで自首を勧めたんだろう。走って逃げれば助かってたんじゃないかと思う。ずっとそういう思いが浮かんできて。忘れた日は一度もありません。」

理不尽に奪われた娘の命と、遺族の苦しみの責任を誰が取るのか。

■弥里さんの母
「こんな被害に遭った上で、こんな思いをさせられるのかと思って。それで誰も責任を取らないって。あなたは運が悪かったんですねと言われているような気がする。おかしいってことを、私は伝えていきたいと思っています。」

※FBS福岡放送めんたいワイド2026年2月24日午後5時すぎ放送

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