「警視庁捜査2課の山本です。渡辺さんですか」。読売新聞中部支社(名古屋市中区)の編集フロアで仕事をしていた9月26日午後0時48分、会社貸与のスマートフォンに、男の声で電話がかかってきた。番号表示は「+」で始まる国際電話。ニセ警察詐欺に違いない。生で「話術」が聞ける好機と考え、スピーカーモードに切り替えて録音機のスイッチを入れた。(渡辺康史)
「事件のことで、富山県警までお越しいただけますか。本日です」
仕事があり無理だと答えると、男は「事件」について説明を始めた。富山県警では「沢村一樹(さわむらかずき)」を主犯格とする詐欺グループの捜査を進めており、大量のキャッシュカードを押収しているという。
「その中の1枚にあなた名義の○○銀行のキャッシュカードが含まれていましたので、渡辺さんが沢村グループの資金洗浄に加担しているのでは、という容疑がかかっております」
男は、カードの連絡先として登録されていた電話番号にかけたと説明。個人の口座に会社のスマホの番号を登録したことはなく、これはうそだとわかった。しかし、続いて男が読み上げた住所は、記者の自宅。名前といい、個人情報が漏れていることにぞっとした。
さらに、記者の口座が「オレオレ詐欺に使われた」として語気を強めた。
「その口座を通して被害に遭われている以上、法的責任は渡辺さん自身にありまして、資金洗浄の罪が成立した場合、財産が凍結されると同時に、逮捕、起訴される場合があることは理解できますか」
そう脅し、再び富山県警まで来いと命じてきた。
「その際には最低20日間の勾留を請求する場合がございますが、本日、ご対応は可能ですか」
可能なわけがない。その旨を告げると、「電話を富山県警に転送するので、電話で捜査協力を」と、態度を軟化させてきた。
「転送」されると、今度は「富山県警察本部刑事部捜査2課の警部補石川」を名乗る女が、改めて事件について説明してきた。後日、富山県警に確認したが、当然、該当する人物はいない。