「犯人がわかれば刑が軽くなるかも」なぜ無実の青年が“凶悪殺人犯”に…?《福井女子中学生殺人事件》ヤクザ男が「最悪のウソ」をついた理由(昭和61年の冤罪事件)

〈自宅で見つかったのは血まみれで死んでいる女子中学生…「犯人を知っている」ヤクザの証言を鵜呑みにした『警察の大失態』(昭和61年の冤罪事件)〉 から続く【写真】この記事の写真を見る(2枚)「犯人がわかれば刑が軽くなるかもしれない」

 覚醒剤事件で追い詰められたヤクザ男が差し出したのは、証拠ではなく都合のいい名前だった。アリバイも物証もないまま、無実の青年(前川彰司さん)は凶悪殺人犯に仕立て上げられていく。昭和61年の冤罪事件「福井女子中学生殺人事件」はなぜ起きたのか?

 新刊『 世界で起きた恐怖の冤罪ミステリー35 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆◆◆
暴力団員Cは、前川さんの中学時代の1学年先輩で、日頃から前川さんを使い走りにするような間柄だった。

 Cは面会に訪れた知人らに「殺人事件の犯人を知らないか。犯人がわかれば自分の刑が軽くなるかもしれない」などと情報提供を求めており、そこで前川さんの名が出ると、同棲相手の女性Dさん宛に「前川のことをよく思い出してくれ。俺の情報で逮捕できれば減刑してもらえるから頼むぞ」と手紙を出していた。

 Cから「血の付いた前川を連れてきた」人物として名前の挙げられた後輩のEは犯人蔵匿の容疑で逮捕され10日余りで釈放されたが、Eの証言から、前川さんの送迎に使用されたのはシンナー仲間のFが人から借りて乗っていた白いスカイラインだったことがわかり、助手席ダッシュボード付近に血痕があったことが判明。

 警察はこうした証言者たちの話を基に、事件の筋書きを以下のとおり組み立てる。
(1)3月19日21時ごろ、前川さんがDさん宅を訪れ、Cからシンナーの一斗缶を受け取ってその場を後にした。

(2)そこに、たまたまスカイラインに乗って現れたシンナー仲間Fに出くわして同乗し、シンナー遊びに誘い出そうと被害者宅のある団地へと向かった。

(3)Fは車中で待っており、前川さんが部屋にいる智子さんを誘いに行った。が、むげに断られたことなどから激昂してその場で殺害。返り血を浴びたまま車に戻ってきた。

(4)前川さんは市内に住む義兄の家まで送ってくれるようにFに求めたが、義兄が留守だったため、再びDさん方にいるCを訪ねた。

(5)しかしこのときCは不在にしており、前川さんはDさんに頼んで暴力団事務所からポケットベルを使ってCの居場所を聞き出してもらった。

(6)前川さんとFは、Cがいるというゲーム喫茶に向かったが詳しい場所がわからなかった。そこでCの後輩Iが出迎えにきて運転を代わり、店まで送り届けた。

(7)ゲーム喫茶で前川さんらはCと落ち合うが、その夜、Cは同じ組の構成員Gと共に覚醒剤取引の用事があった。その後、近くに住むHさん(組員Gの同棲相手)の家に転がり込み、CとGらは覚醒剤を使用、前川さんはシンナーを吸引した。

(8)Cは後でDさんの家まで来るように言い残してその場を離れ、前川さんは20日午前6時ごろDさん方に到着。Dさん宅でシャワーを借りて午後まで眠った。

(9)15時ごろ、Cが前川さんを自宅に送っていく際、血の付いていた着衣などを袋に入れて近くの底喰川に捨てた。

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