メキシコ市(CNN) 毎年何千人もの人々が行方不明になり、遺体の集団が次々と発見されるメキシコで、雇われ運転手が一晩を生き延びられるかどうかは時の運だ。同国ではライドシェアの車両やタクシー内での運転手と乗客双方への残忍な殺害や暴行事件が相次ぎ、全国的な注目を集めている。タブロイド紙の一面は、女性が走行中の車から飛び降りて死亡したり、運転手に路上に置き去りにされたり、乗客にレイプされたりした事件を報じている。【映像】メキシコで生配信中に射殺のインフルエンサー、殺害直前の映像CNNの記者はルース・ロハスさんの夜間の運転に同乗させてもらった。ロハスさんはわずかなプロフィル情報に基づいて、最大限慎重に乗客を選ぶ。広大なメキシコ首都メキシコ市の犯罪多発地帯(レッドゾーン)も把握している。それでも7年間で銃を突きつけられるといった襲撃には何度も遭っているという。
「チマルワカン、イスタパルカなどの地域に行くと、路上で薬物を売ったり、強盗を働いたりする人々を目にする。とても込み入っていて恐ろしい状況だが、それが私の仕事の一部だと学んだ」とロハスさんは語る。
17歳で結婚したロハスさんは、成人してからの人生の大半を子育てに費やした。末っ子が健康上の問題で入退院を繰り返していたのだ。49歳になった今、ロハスさんはようやく自分の収入と車を手に入れた。丁寧に磨かれた4ドアのシボレーのバックミラーには羽のついたドリームキャッチャーが揺れている。
3年前、ロハスさんと娘のカリーナ・アルバさん(29)は、運転ビジネスを始めることを決意。より安全なサービスに需要があると確信し、女性タクシー運転手の団体「AmorrAs(アモーラス)」を設立した。スペイン語で「愛」と「女性」を意味する言葉をかけ合わせた名前で、乗客を女性のみに限定している。
アモーラスは、ビジネスのためだけでなく、連帯のためのグループでもある。団体には運転手に加えて、弁護士や心理学者も参加しており、危険な街で生き抜く女性たちに無償で助言を提供している。2023年の設立以来、熱心なファンを獲得し、今では月平均100回以上の乗車実績があるという。顧客はオンラインまたは電話で予約でき、すべての乗車は団体の担当者によって監視される。担当者はリアルタイムで車両の位置を追跡し、問題が発生したら対処する。
団体の23人のドライバーは全員、副業としてさまざまなライドシェアサービスでも仕事をしているため、大手配車アプリの競合にはなり得ないが、みなアモーラスの予約を優先している。料金は比較的競争力のある金額に設定されており、ロハスさんらによると、運営開始以降、危険な事故は一度も発生していない。
アモーラスの常連客で起業家のドゥルセ・ナバロさん(41)は、月1回の長距離の移動や、コンサートなど夜遅くのイベントのときにアモーラスを利用している。
ナバロさんはCNNに対し、痛ましい出来事が続いたことから、公共交通機関を避けていると語った。ナバロさんの21歳だっためいは21年、メキシコ市の南部に位置するモレロス州でバスに乗ってから間もなく、空き地で遺体となって発見された。さらに昨年には、ナバロさん自身がメキシコ市内の駅で女性専用車両に乗っているときに突然注射のような痛みを感じ、緊急警報器を作動させた。強制的な薬物投与を伴う地下鉄窃盗が増えており、その被害に遭ったのだとナバロさんは考えている。
シェインバウム大統領は、自身の任期を「女性の時代」と宣言し、ジェンダーに基づく暴力の取り締まりを掲げた。メキシコ市は8月、女性を標的とした犯罪対策に特化した警察部署を新設。それでも、友人や家族が出かけた際に襲われたり、行方不明になったりしたという話は後を絶たない。
国連女性機関の18年の報告書によると、調査に回答した女性の10人中9人近くが、メキシコ市の公共交通機関または公共の場で暴力を経験したとしている。メキシコ政府の21年の調査でも女性の10%が過去1年に身体的暴力を経験したと回答した。