「厳罰化ではなく生活保護を」罪を犯した人の“再犯”を防ぐために「福祉」が必要不可欠である理由

2006年1月に発生した「JR下関駅放火事件」を覚えているでしょうか。精神疾患を抱える元受刑者が起こしたこの事件は、刑事司法と福祉・地域社会が分断されたままであることの重大な帰結として、社会に衝撃を与えました。【画像】生活保護の不正受給の内訳(2023年(令和5年)度)「罪を犯した人」あるいは「罪を償った人」の再犯防止と生活保護制度。両者は、これまで別々の制度領域として語られることが多かったかもしれません。

しかし、再犯を防ぐためには、「生きていける社会」を用意することが必要です。この観点において、再犯防止のための更生支援と、生活保護をはじめとする福祉支援は、本来、切り離せない一体のものであるはずです。(行政書士 三木ひとみ)
JR下関駅放火事件を起こした男性(当時74歳)は、軽度の知的障害を持ち、放火を繰り返しては服役を重ね、人生の半分以上を刑務所で過ごしてきた人物です。

京都で生まれ、22歳で最初の事件を起こしてから、裁判では心神耗弱などが繰り返し認定されながらも、「福祉」に結びつく支援を受けることは一度もありませんでした。

事件の8日前、福岡刑務所を満期出所した男性は、誰にも迎えられず、年金も生活保護も受けられず、ホームレス状態に。8日間で8か所の公的機関をさまよい、警察、病院、福祉事務所などと接点を持ちましたが、結局誰からも支援を受けられないまま、下関駅で段ボールに火をつけました。

裁判では動機について「刑務所に戻りたかった」と話しています。

「刑務所を出たときに、誰も迎えに来なかったのが一番つらかった」

「一人よりも、(自分を虐待した)お父さんといたときの方が良かった」

自身が父親から児童虐待を受けていた過去すらも、「誰かと一緒にいた」時間として肯定するほどの深い孤独が、彼の人生を支配していたのです。

支援とは、解決することではなく、寄り添うことです。罪を償った人が「やり直す」ため、社会は拒むのではなく、迎え入れる。制度は冷たく突き放すのではなく、手を差し伸べる。そうした「当たり前の支援」がなされていたなら、あの夜、下関駅放火事件は起きなかったかもしれません。

この事件を契機に、司法と福祉の連携は国レベルで加速します。2009年には「地域生活定着支援センター」事業が始まり、法務省・厚労省の協働による「司法福祉」の制度化がスタート。障害や高齢による再犯リスクを福祉で支える仕組みが、ようやく芽生えました。

また、地方自治体レベルでも、同様の動きが出てきています。たとえば、兵庫県明石市では、保護司、社会福祉士、弁護士らによる民間刑務所見学が実施されるなど、福祉と司法がともに「やり直し」を支える仕組みづくりに向けて対話を重ねる動きがありました。

「更生支援と生活保護は、人が生きるうえで最も困難な局面にあるとき、その尊厳を守り、再び社会の中で生き直すための土台となる支援である」

ある支援者が語ったこの言葉は、制度の理念と実践の接点を端的に表しています。

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