銀行口座の違法な売買や譲渡が後を絶たない中、金融庁と警察庁が連携して対策を強化しています。国は銀行の利用者に注意を呼び掛ける一方、銀行側に対しても厳格な対応を求めています。金融機関に対して、当局は具体的にどのような対応を要請しているのか。今後、本部と現場の両面で当局への協力が必要になる可能性がある「おとり口座」とは、何なのか。違法売買の現状や問題拡大の背景、そして今後の展望を含め、まとめて解説します。【画像付き記事全文はこちら】
まず大前提として、「違法な口座売買」と言っても、法律に沿った良い売買と違法な売買があるわけではありません。預金口座を売買したり、譲渡したりすること自体が基本的にNGです。
仮に売買に手を染めると、逮捕などの刑事罰や口座開設の制限、そして多額の損害賠償請求という極めて重大なペナルティーやリスクを負うことになります。
法律で禁止されているにも関わらず、口座売買は近年増加傾向にあります。全国銀行協会の調査によると、口座不正利用に伴う口座の利用停止・強制解約などは、2021年から2024年にかけて約2.3倍に増えました。
なぜ、こんなに増えているのでしょうか。背景には、預金口座の「単価アップ」という現実があるようです。
2011~2012年と2024年を比較すると、口座の売買価格の平均値は約1万円上昇。最大値では差がさらに広がり、2011~2012年が7万円のところ2024年では50万円にもなっています。軽い気持ちで目先の見返りを狙い、取り返しのつかない責任を負う危険性が高まっていると言えます。
また、口座の売買・譲渡を伴わない「送金バイト」の横行も深刻です。口座に振り込まれた現金を他人に送金する仕事として紹介され、他の口座(犯罪利用口座)への送金を行う事例が後を絶ちません。警察庁の公表資料によると、主にSNSなどの非対面形式を通じて募集が行われ、報酬を受け取るケースが大半と言います。
2025年には国内最大規模の「口座ブローカー」とされる男女7人が逮捕されたというニュースが注目を集めました。複数の特殊詐欺グループに計948件の預金口座・暗号資産口座を売却したと見られており、口座売買に絡む犯収法違反の容疑に問われています。その手口は、SNSなどで「闇バイト」として名義人を募集し、口座を1件当たり3万~30万円で買い取り、特殊詐欺グループに20万~75万円で転売するというものだったとされています。
男らが口座を売却した特殊詐欺グループによる被害額は、約11億4,000万円相当に上ると報じられています。預金口座を売る行為は、一見すると直接的な被害者がいないように思えてしまうかもしれませんが、結果的には口座売買が絡む犯罪によって多額の被害が出ているのです。