「銭形警部」は安物を着ない。大人の男性から選ぶべき“本物の正装”、銭形に学ぶ働く男の背中

日本でいちばん有名な盗賊といえば、「ルパン三世」をおいてほかにいない。神出鬼没にして変幻自在の大泥棒。相棒の次元大介や、謎めいた美女・峰不二子らとともに、世界中の宝物を鮮やかに盗み出してきた。その一方で、どこか憎めない愛嬌を備えていることも彼らが長く愛されてきた理由だろう。今回の名品図鑑は、そんな空想のキャラクターたちが愛用した名品に光を当てる、本連載でもひときわ異色のテーマでお届けする。【写真】銭形に学ぶ、大人のトレンチコートスタイル。
『ルパン三世』のような冒険活劇において、敵役の存在は欠かせない。ルパン三世の逮捕にすべてを捧げる男、それが銭形警部である。岡っ引き・銭形平次の子孫で、本名は銭形幸一。ルパンからは親しみを込めて「とっつぁん」と呼ばれている。

『ルパン三世カルトブック』(双葉文庫)には、「警視庁勤務で、現在はルパン三世専属捜査官としてICPOに出向している」と記されている。ICPOとは国際刑事警察機構のこと。世界中でルパン三世を追い続けられる理由が、ここにある。また『ルパン三世研究報告書』(双葉社)では、「007もそこで習練をつんだという某諜報機関に長年留学」と、その経歴が紹介されている。コミカルな失敗も多いが、実は有能で、射撃の腕も相当なものだ。
そんな銭形警部のトレードマークといえば、やはりトレンチコートである。前述の『ルパン三世カルトブック』のファッションチェックには、「トレンチコート→バーバリー」との記述がある。本連載第1回で紹介した『ルパン三世名場面集 PARTⅤ』にも同様の記載が見られるが、ウェブサイト「L3雑録」では、「ファンにはお馴染みの話ではあるものの、本編に反映されていない本書のみの記述」と指摘されている。少なくとも映像作品の中で、銭形警部が着用するトレンチコートのブランド名が明確に語られた例は確認できていない。ただし、どの作品においても、彼が常にトレンチコートを身に纏っていることは紛れもない事実だ。

トレンチコートの歴史やディテールについては、2021年4月公開の本連載で詳しく触れているが、もともとは軍用として開発された、タフで機能的なアウターである。犯人を追い続ける刑事や探偵、あるいはニヒルな悪役の装いとして、これほどふさわしいコートはないだろう。

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