ハンセン病とされた男性が隔離施設「特別法廷」での審理を経て死刑となった「菊池事件」について、熊本地裁が28日、裁判のやり直し(再審)を認めるかどうかの決定を出す。特別法廷での審理について、憲法違反と認定した民事訴訟判決が確定しているが、違憲か否かとともに憲法違反が再審開始の理由に該当するかどうかが焦点。死刑執行後に再審開始が認められた例はなく、司法判断が注目される。(水木智、石原圭介)
2021年に始まった再審請求審で、弁護側は、公判が国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(熊本県合志市)内などに設置された法廷で開かれ、裁判官らが予防衣を身につけて審理をしたことから、公開裁判を受ける権利を保障する憲法37条や、法の下の平等を定める憲法14条などに違反すると主張した。その上で、憲法に反する法律や行為を無効とする憲法98条などを根拠に「憲法違反も再審の理由になる」と訴える。
これに対し、検察側は公判の新聞記事などを踏まえて傍聴人はいたとみられることや、当時の科学的知見では、予防衣の着用などは感染予防のためやむを得なかったとして、憲法違反には当たらないと反論。刑事訴訟法で憲法違反が再審理由になると定められていないことから、再審は認められないと主張する。
再審請求審では、男性が犯人かどうかも争われた。弁護側は、凶器とされた短刀の厚みと被害者の傷の幅が矛盾するとした法医学者の鑑定書と、男性から殺害告白を聞いたとする親族らの供述について「核心部分が変遷しており、信用できない」と分析した供述心理学者の鑑定書を提出し、男性を犯人とした確定判決は誤りとしている。
検察側は弁護側が主張する傷について、「確定審の法医学者の鑑定結果によれば、凶器の短刀で形成可能」とし、親族供述に関しても「弁護側の鑑定方法は非科学的な独自の分析で信用性がない。犯行告白を聞いたという核心部分は合致している」と反論している。