「私の身体は私のもの」——中絶をめぐる女性たちの葛藤と現実《予期せぬ妊娠は他人事ではないのに…》選択を縛る制度の壁

子どもを「産む」か「産まない」か。それを考えるとき、思いがけず「中絶」という選択に直面する人もいる。望まぬ妊娠をしてしまう可能性は、誰にとっても他人事ではない。【写真】大橋由香子氏だが中絶についての話は憚(はばか)られ、当事者になってしまった女性が苦しみを抱え続けているのが現状だ。劇作家の石原燃氏と共著で『わたしたちの中絶 38の異なる経験』を刊行した編集者の大橋由香子氏に中絶をめぐる問題について聞いた。

■女性たちの葛藤に直面して
同書には、姑に出産を反対された1937年生まれの既婚女性や、大学生で産めなかった女性など多様な人が登場する。中絶をした時期も年代も、中絶についての思いも多様。罪悪感を抱きがちな体験を書いてもらったり聞き書きしたりする作業は困難だったと大橋氏は明かす。

 「取材を申し込んだときは『いいですよ』と引き受けてくれたけれど、『やっぱり無理』と断られたケースも結構あります。性暴力を伴う経験をした人はトラウマがあり、話す段階ではもちろん、原稿を確認していただく際にも思い出してしまう。本が出来上がって1年経つのに、まだ読むことができないという人もいます」(大橋氏)
一方で、「何十年前の体験を久しぶりに話したけれど、あれは自分にとって必要なことだった」と振り返る人もいたという。

 医療関係者の懲罰的な言動で深く傷ついた人もいれば、何も言われずホッとした人もいた。

 「納得して中絶したように見える人が、いまだにすごい自責の念に駆られているなど、想像以上に実情は複雑でした。そして、ここに出ていない体験が、まだまだあると思います」(大橋氏)

 大橋氏は82年に結成されたグループ「SOSHIREN 女(わたし)のからだから」に参加し、長年、刑法「堕胎罪」の撤廃を求めてきた。
日本では07(明治40)年の刑法で堕胎罪を規定し、堕胎(中絶)については妊娠した女性本人や施術をした人が処罰の対象となる一方、「妊娠させた」罪を男性に問うことはない。

 48年に制定された優生保護法(96年に母体保護法へ改正)により、優生的理由、母体の健康を著しく害する場合、レイプを理由とする中絶は例外的に合法となる。翌年に経済的理由なども加わったことで、予期せぬ妊娠をした人も合法的に中絶できるようになった。

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