国際的な犯罪組織が訪日客に偽装して詐欺の「受け子」らを日本に送り込んでいる実態が浮かんだ。「日本旅行に無料招待」などと甘い言葉で誘い、使い捨てにしているとみられる。
「中国の福建省で仕事を紹介された」。昨年12月、警察官を装う「ニセ警察詐欺」の手口で名古屋市の男性(55)から現金100万円を詐取したとして愛知県警に詐欺容疑で逮捕された男(37)ら台湾籍の2人は、調べにこう供述したという。
捜査関係者によると、2人は福建省の公共施設で、台湾人向けの事業補助金の申請の列に並んでいた際、見知らぬ男から「荷物を運ぶ仕事がある」「日本に行けば遊んで暮らせる」などと持ちかけられた。
来日した2人は、詐欺の被害者宅で現金やキャッシュカードを受け取り、現金自動預け払い機(ATM)で金を引き出した。県警は防犯カメラの捜査などで行方を追い、東京都内の滞在先で2人を確保した。捜査幹部は「犯罪組織からすれば捕まってもいい人材だったのだろう」とみる。
指示役は正体を隠している。富山市と盛岡市の女性から千数百万円を詐取したとして昨年、岩手県警に逮捕されたマレーシア国籍の男(37)は「日本で物を運ぶ仕事」と誘われて来日し、「ボス」と呼ばれる人物の指示に従った。
男の裁判資料によると、最初の報酬は約27万円だった。男は運んだ物が「詐欺の被害金かもしれない」と考えたが、帰国後、ボスから報酬約50万円を提示されて再来日。空き地に置かれた現金1000万円入りの紙袋を運ぶなどした。ボスの名は分かっていない。
同様の事件は韓国でも起きている。ソウルの南方・平沢(ピョンテク)の警察署は昨年3月、特殊詐欺の被害金約1億5000万ウォン(約1600万円)を回収したとして観光ビザで入国した中国人4人を逮捕した。同署幹部によると、回収は「リレー方式」で行われ、受け子を韓国人が、2次、3次の運搬役を中国人4人が担ったという。