『ラストマン』福山雅治の全盲演技をずっと見てきた全盲所作指導担当者が語る「違和感がない」理由

2023年、TBSテレビの日曜劇場で放映された『ラストマンー全盲の捜査官ー』。福山雅治さん演じる、“ラストマン(=事件解決の最後の切り札)”と呼ばれる全盲のFBI捜査官・皆実広見と、犯人逮捕のためには手段を選ばない孤高の刑事・護道心太朗を演じた大泉洋さんが、凸凹バディを組み、数々の難事件を解決していく刑事ドラマだ。【写真】撮影現場に同行し全盲所作指導をした視覚障碍者スタッフときにユーモラスに、ときに最強の相棒として見せる二人の掛け合いが視聴者を物語の世界へ引き込んだ。そしてもはやこれまでというスリリングな展開や同僚・部下を演じる俳優陣の個性的なキャラクターも話題を呼んだこの人気作が、完全新作のスペシャルドラマと映画という豪華な2本立てで帰ってきた。

そして前作から大きな話題を呼んでいるのが、全盲のFBI捜査官である皆実広見役の福山雅治さんによる「全盲」の演技。違和感のないその自然で説得力のある演技の裏にはとある団体の存在がある。全盲の所作指導を担当した「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の方たちだ。

連続ドラマから今回のスペシャルドラマ、そして映画へーー。長きにわたり福山雅治さんや制作スタッフの「視覚障碍への思い」を見守ってきた「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」代表の志村季世恵さんと志村真介さん、そして視覚障碍者スタッフたち。今回は全盲所作指導をした立場から、制作現場での様子や、『ラストマン』から学べる視覚障碍者のリアルについてメールインタビューで話を聞いた。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、1988年にドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって誕生した。特別なトレーニングを受けた視覚障碍者のガイド(「アテンド」と呼ばれる)に導かれ、光を遮断した“純度100%の暗闇”の世界を体験するプログラムだ。日本には1999年に上陸。現在は「対話の森」と呼ばれるミュージアムでその体験ができる。まずは参加者が数人のグループとなって、白杖を手に暗闇のプロであるアテンドの案内のもと、暗闇の世界へと誘われる。ここからはアテンドと、そして同じグループになった仲間だけが頼り。互いに声をかけ合い、助け合いながらさまざまな仕掛けを乗り越え、ゴールまで進んでいく。単なる視覚障碍者の疑似体験ではなく、視覚以外の感覚とコミュニケーションの大切さを楽しむソーシャル・エンターテインメントでもある。

『ラストマン』の監督や脚本家などの制作チーム、さらに福山雅治さんらは2023年のドラマ撮影前に「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」が体験できるこの「対話の森」へと実際に足を運び、体験している。さらに視覚障碍者スタッフへのインタビューや食事を重ね、白杖の使い方や、文字盤に直接触れて時間を知る触読式腕時計、方向を伝えるための「クロックポジション」など、日常の具体的な所作を学んでいった。さらにITに強いスタッフがスマートフォンやパソコンの文字を音声化するボイスオーバーの使い方を指導し、料理が得意なスタッフが肉じゃがを作るシーンを、フルマラソンを2時間30分台で走る記録を持つスタッフが皆実のジョギングシーンを担当するなど、多くの視覚障碍スタッフがそれぞれの得意分野を担当して指導にあたったという。そう、興味や得意分野は一人ひとり異なる。多くの視覚障碍者たちによって、福山さんによる全盲の捜査官・皆実は作り上げられたのだ。

さらに、よりリアリティさを増したのは、福山さんの役作りによるこだわりだった。白杖を日常でも使うなどしていたそうだ。指導した視覚障碍者スタッフたちが「僕たち視覚障碍者の音になっていた」と驚いていたほど体得していたという。こうしたドラマ制作時の話は以前、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の代表を務める志村季世恵さんと志村真介さんご夫妻にインタビューを行っている。

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