「餃子(ギョーザ)の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大(おお)東(ひがし)隆行さん(当時72歳)が京都市内で射殺された事件は、19日で発生から12年となる。王将のフランチャイズ(FC)店を過去に経営し、大東さんと親交が深かった男性が初めて取材に応じた。大東さんをしのび、11月から始まった公判に対する複雑な心境を語った。
兵庫県豊岡市の焼き肉店経営、森山良実さん(75)。1990年に王将とFC契約を結び、兵庫県内で4店舗を展開してきた。大東さんとはFCオーナーとの旅行や集まりで交流を深め、仕事の相談もしてきた。現在、王将FCの経営は息子に引き継いでいる。
森山さんは大東さんについて「とにかく人間味のある社長だった」と話した。従業員の誕生日にはプレゼントを贈ってくれ、「自分の息子のように扱ってくれた。だからみんなついていった」という。
別の焼き肉店が集団食中毒の問題を起こし、その余波で森山さんの焼き肉店の客足が遠のいた際、大東さんは「困った時は原点に返らなあかん」と助言し、資金調達に協力してくれたこともあった。そんな姿に、同じ経営者として背中を押された。
2013年12月中旬、森山さんは京都市山科区の王将本社を訪れ、大東さんに年末のあいさつをしたが、最後になるとは思わなかった。大東さんは約1週間後の同月19日午前5時46分頃、本社に出勤してきたところを拳銃で撃たれ、殺害された。森山さんは「王将がここまで来られたのは、大東さんのおかげ。惜しい人を亡くした」と声を落とした。
約9年後の22年10月、大東さん殺害の実行役として、特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)が京都府警に殺人容疑などで逮捕され、翌月に起訴された。田中被告は今年11月に京都地裁で開かれた初公判で無罪を主張。関与を示す直接証拠はなく、検察側は状況証拠を積み重ねて立証する見通しだ。
府警は現在も指示役を捜査中で、初公判では、殺害の動機や組織的関与について言及はなかった。森山さんは「新事実が明らかにならない裁判には、期待できない」と落胆する一方、「このままでは大東さんが浮かばれない。少しでも真実にたどり着く新しい証拠が出れば」と願っている。