最近、とんでもない規模のサイバー攻撃が続いている。
日本では、飲料大手アサヒグループホールディングスがランサムウェア攻撃を受けて、9月29日に事業が停止する事態になった。現在も完全復旧はしていない。攻撃者はロシア系サイバー犯罪グループ「Qilin(キリン)」で、システムを暗号化して情報を窃取し、身代金を奪うのが目的だったと見られている。【画像】どうなる? サイバー攻撃が止まらないその直後の10月には、通販大手アスクルもロシア系と見られる「Ransomhouse(ランサムハウス)」という犯罪グループからランサムウェア攻撃を受け、完全復旧に向けて対応を続けている。
いうまでもなく、サイバー攻撃は犯罪である。被害を受けた企業も対策はしていたが、それでも被害に遭ってしまうということは、対策が十分ではなかった可能性も考えられる。企業は対策をさらに強化していく必要がある。サイバー攻撃対策をインフラコストとして組み込む意識に変えていくべきだ。
実は、日本であまり大々的に報じられていないが、英国では自動車メーカーのジャガー・ランドローバーが未曽有のサイバー攻撃被害を受け、政府が乗り出すほどの大惨事に発展している。
ジャガー・ランドローバーのケースは、企業へのサイバー攻撃が国家経済にも影響を及ぼす実態を示している。サイバー対策では比較的進んだ国である英国でこのような事態になっていることを考えると、日本にとっても対岸の火事ではない。政府や企業がこのケースから学べることがあるはずだ。
ジャガー・ランドローバーについて簡単に説明すると、まず、英国のジャガー(創業1922年)とランドローバー(創業1948年)を2000年に米フォードが買収。その後、2008年にインドの大手自動車メーカーのタタ・モーターズが、両社をフォードから買収して統合した。
世界的にはそれほど大きなシェアを占めないものの、ジャガーもランドローバーも、日本や米国でもよく見かける人気ブランドであることは間違いない。英国では最大の自動車メーカーだ。
同社がサイバー攻撃を受けたのは、2025年9月2日。同社は「事業運営が深刻に混乱した」と発表。すべての生産・小売業務を停止せざるを得なくなった。
9月24日には、業務停止期間を10月1日まで延長すると明らかにした。その後、10月末までに生産プロセスを部分的に再開したと報じられているが、現在も完全復旧には至っていない。
被害は壊滅的である。主要工場は全面停止になり、従業員は自宅待機を強いられた。11月に公開された決算報告によると、この攻撃に対応するために発生した費用は1億9600万ポンド(約400億円)に達するという。攻撃前は、英国で1日1000台ほどの車を生産していた。それが停止した影響は極めて大きい。
被害はこれだけにとどまらない。サプライチェーンの部品サプライヤーは宙づりとなり、販売店は修理や新車登録すらできない状況になった。影響を受けた企業などは5000組織に及ぶとされる。英監視機関サイバー・モニタリング・センター(CMC)の報告によると、このケースは英国史上最も経済的損失の大きいサイバー攻撃の一つになった。
英国の中央銀行であるイングランド銀行は、今回のサイバー攻撃を、2025年第3四半期の成長鈍化(予想よりGDP伸び率が低かった)の原因の一つに挙げている。
政府もこの事態を無視できなくなった。取引先のサプライヤーを救済するために支援策を協議し、15億ポンド(約3000億円)の融資保証を発表した。被害を受けた企業が金融機関から運転資金を調達する場合、英国輸出信用保証局(UKEF)がその返済を最大80%保証するという仕組みだ。