“数百万人の認証情報”を盗んだハッカー、その陰に謎の組織 何者なのか?

サイバー攻撃の被害が深刻化する中、英国で大きな判決が下された。複数のWebサイトを改ざんし、数百万人を超える個人のログイン認証情報を盗んだ26歳の男に、懲役20カ月の実刑が言い渡された。この事件で注目すべきは、被告が政治的および思想的な背景を持つ組織とつながっていた点だ。その背後には「Yemen Cyber Army」と呼ばれる過激派組織が存在する。
英国ロザラム在住のアル・タヘリー・アル・マシュリキー被告(26歳)は、「Computer Misuse Act 1990」(コンピュータ不正使用法)に基づく9件で、2025年8月15日にSheffield Crown Courtで懲役20カ月の判決を受けた。英国犯罪対策庁(NCA)によると、被告は多数のWebサイトに不正アクセスして改ざんし、数百万人のログイン認証情報を窃取していた。

 NCAは米国当局から、「Spider Team」と「Yemen Cyber Army」という2つの過激派ハッカー集団に関する情報提供を受け、2022年8月に被告を逮捕した。押収したノートPCや複数の携帯端末を解析した結果、被告のソーシャルメディアやメールアカウントから、Yemen Cyber Armyとの関わりが確認された。押収されたデジタル証拠は、被告の手口と動機を裏付ける決定的な材料となった。中でも注目すべきは、次のような点だ。

・多数のWebサイトへの侵入と管理権限の不正取得
・自身の偽名や政治的主張を記した「隠しページ」の埋め込み
・利用者の認証情報(ユーザー名やパスワード)の収集と持ち出し

 「被告の攻撃は標的となったWebサイトを機能不全に陥れ、利用者や組織に深刻な混乱をもたらした。いずれもYemen Cyber Armyの政治的および思想的主張を広めることが目的だった」。NCAの国家犯罪捜査局(NCCU)の副部長兼責任者、ポール・フォスター氏はそう述べた。

 法廷では、被告が2022年2月にニュースサイト「Israeli Live News」の管理者ページへ不正侵入し、サイト全体をコピーしていたことが明らかになった。さらに、イエメン外務省やセキュリティメディア省のサイトでは、利用者のユーザー名を収集したり、脆弱性スキャンと呼ばれる侵入前の調査行為を自動ツールで実行していたことも確認された。その他、次のような組織が攻撃の標的となった。NCAは、被告が2022年に合計3000件以上のWebサイトへ不正アクセスした可能性が高いとみている。

・カナダと米国にある複数の宗教団体のWebサイト
・California State Water Board(カリフォルニア州水資源委員会)
・その他3000件を超えるWebサイト

 NCAのデジタル鑑識により、被告が保持していたデータについて確認された内容は次の通りだ。

・Facebook利用者数百万人の個人データ
・Netflixのユーザー名やログイン情報
・PayPalを含む複数のオンラインサービスの認証情報
・さまざまなサービスのログイン情報をまとめた文書

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