「昔からの仲間だし……」 なぜ運送会社は不正を通報できないのか? 白ナンバー不正や低運賃ダンピング、仲間意識が阻む業界浄化の現実とは

「◯◯という不正行為を行っている運送会社がある」

筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)のもとには、こうした情報が繰り返し届く。このときの内容は、白ナンバートラック(自家用車扱いのトラック)を使った営業行為だった。【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが上場企業の「平均年収」です!(11枚)「荷主から、商品を買い取ったことにして白ナンバーのトラックで輸送。輸送後、荷主が商品を買い戻したことにすることで、表向きは合法に見せかけているんですよ」

情報を寄せた運送会社の社長は強い怒りをにじませた。

 買戻金額と買取金額の差額が、実質的な運賃になっている。しかも、この行為の元請けになっているのは営業ナンバーを持つ運送会社だという。自社では対応できない低単価の案件を、営業ナンバーを持たない(取得できない事情を抱える)事業者に流し、そこで生まれるマージンを取っている構図がうかがえる。

 社長は元請けの運送会社だけでなく、荷主や白ナンバーで運行している事業者まで把握していると話した。「そこまでわかっているなら、トラックGメンに通報すればいいのでは」と筆者が問うと、社長は

「いや、そうはいっても元請けは昔からの仲間だし……」

といい淀んだ。なお、トラックGメンは当初、荷主への是正指導を目的に設立されたが、現在は元請け事業者も対象に含めている。
「悪貨が良貨を駆逐することのないよう公平公正な競争の基盤を確立するとともに、問題のある荷主に対しては、改正貨物自動車運送事業法や独占禁止法等の諸々の法律により、適切な指導を行っていただき、真面目な事業者がより効率的に事業運営を行える社会にしていかねばなりません」

これは2023年1月、当時の全日本トラック協会会長だった坂本克己氏(現・最高顧問)が年頭所感で述べた言葉だ。

 運送会社は1990年代の約4万社から、規制緩和を経て現在は6万2848社(2024年3月末)まで増えた。事業者の増加は過当競争を招き、業界全体の体力を奪った。仕事を確保するために、

「原価を割るダンピング運賃」

で受注する会社が現れた。荷主から過酷な手積み手卸しや長時間待機、法令を無視した運行を求められても、「ほかにも運送会社はいる」と迫られ、断れない状況に追い込まれる例もある。その結果、トラックドライバーの仕事は

「労働時間は2割長く、給料は2割安い」

とやゆされるまでに地位が低下した。

 2024年4月には働き方改革関連法が施行され、ドライバーの年間残業時間に上限が設けられた。いわゆる「物流の2024年問題」である。同年10月からは物効法と貨物自動車運送事業法の改正が順次始まり、2025年6月にはトラック事業的青果関連2法も成立した。

 こうした法整備を含む政府の物流革新政策には、筆者を含め疑問を抱く点も少なくない。それでも大枠としては、運送会社、元請、荷主の不正を正し、「従わない」「従おうとしない」事業者に罰則を科すことで、適正な競争原理が働く環境へ改め、物流産業を健全化しようとする内容だ。長年、不正を公然と続けるブラック運送会社に悩まされてきた業界にとって、本来は歓迎すべき方向性である。

 だが現実には、先に触れたような仲間内での不正隠しが目立つようになってきた。

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