国の助成金の申請代行業務を独占的に担う社会保険労務士が、不正受給の申請に関与した例が相次いでいる。読売新聞のまとめでは2024年度までの3年間に、少なくとも64人の社労士が従業員を休業させた企業への助成金など計約11億円の不正受給に関わったことが判明。刑事事件に発展したケースもあり、専門家は対策強化を求めている。(柏原諒輪、西村魁)
読売新聞が厚生労働省や各労働局の公表資料などをまとめたところ、22~24年度に不正に関与したと労働局から認定された社労士は全国で計64人に上り、一部は資格を失う「失格」や業務停止の処分を受けた。従業員を解雇せず、休業にとどめた企業に補助する雇用調整助成金(雇調金)を巡る不正が最多を占めた。
雇調金を巡っては、コロナ禍に直面した企業を早急に支援しようと、政府が20年4月から3年間、申請手続きを簡素化するなどの特例措置を実施。3年間で約630万件、約6兆円が支給された。
雇調金などの助成金については各企業が直接労働局などに申請できるが、社労士に依頼すれば要件確認などがスムーズに進み、早期の受給につなげられる利点がある。都内のベテラン社労士は「『雇調金バブル』と言える状況が続いていた。仕事が増えた社労士は少なくない」と振り返る。
一方で、手続きの簡素化に乗じた虚偽申請も相次ぎ、今年6月までに判明した特例措置期間の不正受給の総額は1044億円超に上る。助成金の2割程度が相場とされる報酬目当てに不正に関わる社労士が続出したとみられ、ある労働局の担当者は「申請書に不備がなければ基本的に支給を認めざるをえない。記載が簡略化された書類で偽造を見抜くのは難しい」と明かす。
社労士が企業側の虚偽申請を見抜けずに関与してしまったケースもある一方、積極的に企業側に働きかけるなどして不正を主導した例も目立つ。
社労士として雇調金など計約3250万円の不正受給に関与したとして詐欺罪に問われた元被告の女性は昨年2月、東京地裁から懲役4年6月の実刑判決を言い渡され、確定した。