広島市安芸区で2005年、市立矢野西小1年の木下あいりさん(当時7歳)が下校中に殺害された事件から22日、20年となった。当時、捜査にあたった広島県警人身安全対策課次席の瀬戸田千恵香警視(55)は「犯人逮捕だけではなく、未然防止も警察官の使命だと痛感した」と振り返る。(小山舞)
瀬戸田さんは当時、県警捜査1課で殺人事件などを扱う強行犯係の巡査部長だった。事件の日は県西部で起こった別事件の捜査で廿日市署にいた。
午後3時頃、「海田署管内で段ボールに入った女の子の遺体が発見された」との警察無線が聞こえた。状況がよくわからないまま車で現場に向かった。夕方で道が混み、焦る気持ちからも「早く着きたいのに全然進まない」と、いら立ちを覚えていた。
現場の住宅街に着くと、規制線が張られ、捜査員や報道陣で騒然としていた。県警は殺人と死体遺棄容疑で海田署に捜査本部を設置。瀬戸田さんも深夜まで聞き込みに奔走した。先輩からは、あいりさんが性被害に遭っていたことを知らされ、泣いた。「涙を我慢できなかった。この時の気持ちは言葉では表現できない」
翌日、事件は動く。遺体が入れられていたガスコンロの段ボール箱を手がかりに、捜査員が聞き込みで同じガスコンロのある部屋を見つけた。瀬戸田さんはこの部屋に住むペルー国籍の男を捜査する特命班の一員になった。身辺情報を調べ、尾行もした。
男の態度は人目を忍ぶこともなく堂々としていて「本当に犯人なのだろうか」と少し戸惑ったが、尾行の中で男が捨てた缶コーヒーを回収。この缶から採取した資料と段ボールや遺体に付着していたDNA型が鑑定で一致した。任務を果たせてほっとしたことを覚えている。
関与が強く疑われる中、男は突然行方をくらまし、捜査本部は24時間態勢で捜索するとともに逮捕状を請求。三重県にいるとの情報をつかみ、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ受刑者(53)を逮捕した。「裁判で判決を出してもらわなければいけない。そのためのスタートラインに立てた」と思ったという。