街を切り裂く轟音と悲鳴、東京をまるごと恐怖に陥れる連続爆破事件。きっかけは、「スズキタゴサク」と名乗る冴えない中年男が放った「霊感で事件を予知できます。これから3回、次は1時間後に爆発します」という予言──。【画像】鋭い洞察力で犯人を追い詰める刑事・類家(演:山田裕貴さん)呉勝浩さんのベストセラー小説を原作にしたサスペンスミステリー映画『爆弾』が、10月31日から公開されている。その緊迫感溢れる展開とアクションは反響を呼び、累計動員は100万人を超え、興行収入は14億円を突破する爆発的な大ヒットスタートを記録した。
佐藤二朗さんの怪演が際立つ謎の男・スズキタゴサクの“爆破予言”に翻弄される警察。そんな彼と取調室を舞台にした心理戦&頭脳戦を繰り広げるのは、山田裕貴さん演じる警視庁捜査一課・強行犯捜査係の刑事・類家だ。
類家をはじめとした刑事と爆弾魔・スズキによる、長時間にわたる取り調べと言う名の“対決”が象徴的だが、ふと「現実でもこうした取り調べはあるのだろうか」と興味がわいてくる。
数多ある警察を描いたフィクションの中で、映画『爆弾』は元警察の目にどう映ったのか。今回は、千葉県警に27年間つとめた森透匡(もりゆきまさ)さんと、警視庁に26年間在籍した西見高次(にしみたかし)さんの二人に、元刑事の立場から観た『爆弾』について話を聞いた。
文:フガクラ 取材・編集:恩田雄多(KAI-YOU)
※この記事には映画『爆弾』のネタバレが含まれます。
──まずはお二人の自己紹介として、警察時代にどういった事件を担当されていたか、そして現在の主な活動についてうかがえればと思います。
森:森透匡です。千葉県警で警察官を27年、うち刑事を20年つとめていました。刑事としては捜査二課所属、つまり知能犯担当ですね。あとは詐欺・横領・選挙違反など、組織犯罪対策課にも長く在籍していました。
若い頃は、捜査一課の事件応援や、薬物・銃器の事件を追いかけることもありました。警察時代の最終的な役職は警部で、捜査本部などで指揮を執る立場でした。
現在は日本刑事技術協会(※)の代表で、企業顧問・コンサル、講演・研修、テレビ出演など、元警察官ならではの活動を行っています。
西見:西見高次と申します。私は通算、26年間警視庁に在籍していました。20代は交番・パトカー勤務で、一時期は柔道の特別訓練員(選手)も経験しました。その後、機動隊の爆発物処理班に約3年在籍した後、29歳頃に刑事へ配属。それ以降は主に暴力犯事件担当、いわゆる“マル暴”の経験が長かったです。
現在は行政書士事務所の運営と、警察が取り扱いにくい微妙な事案の相談を受けて解決する株式会社プライベートポリスの代表をしています。
──実際に映画『爆弾』をご覧になって、元警察という立場からどのように感じましたか?
森:忖度なしで率直な感想を言うと、非常に面白い映画でした。取り調べシーンを軸に爆弾事件を扱う刑事ドラマというのが、とにかく新鮮で。
あと、佐藤二朗さんら役者陣の演技が良くて、取調室で行われる犯人の追い込み方もリアリティがあった。印象に残ったのは街中で爆弾が起爆して、たくさんの人々が逃げ惑うシーン。特撮も迫力があって、撮影するのは相当手間がかかっただろうなぁと。
西見:私もいち観客としてスズキタゴサク役の佐藤二朗さんの演技に感動しました。普段、テレビドラマでたまに拝見するんですけど、あんなに迫力のある役者さんだと思わなかった。劇中で長台詞を一気に捲し立てるシーンがあるんですが、あの長尺で観客に恐怖や緊張感を与えられるのは、相当な演技力ですよね。
物語の内容については、現代であれほど大規模な爆弾事件はほとんどあり得ないと思います。とはいえ、エンタメとして取り上げてくれたお陰で、若い人に警察の重要性を伝えられる良い作品だと思いました。
※一般社団法人日本刑事技術協会:刑事として培われた観察力・判断力・対人対応力などの「刑事技術」を社会に活かし、企業や団体のリスクマネジメント、危機管理、コンプライアンス体制の強化を支援。警察OBの知見を基に、研修・講演・コンサルティングを通じて安全で健全な社会づくりに貢献している。