《積水ハウス地面師事件》“主犯格”カミンスカスが〈獄中からの手紙〉で指摘した“黒幕”の正体

NHK「未解決事件」シリーズで、大手ハウスメーカー・積水ハウスが55億円を騙し取られた地面師事件が取り上げられる(10月25日放映)。【画像】カミンスカス操が獄中から送ってきた手紙この事件をめぐっては、ノンフィクション作家・森功氏のもとに、主犯格とされるカミンスカス操から 13通に及ぶ手紙 が届いていた。獄中とのやりとりを森氏が続ける中で、地面師事件の謎が浮かび上がってくる。

◆◆◆
カミンスカス操から3月19日付の手紙が届いた。

〈文藝春秋ありがとうございました。記事読ませて頂きました〉

 本誌先月号では積水ハウスの海喜館(うみきかん)事件で懲役11年の実刑判決が確定し、東日本の刑務所に収監されている当人との書簡のやり取りを紹介した。昨年4月から交信を始め、これで16通目になる。こう括っていた。

〈本当の事が解明されればいいだけです。(中略)森さんの思ったとおりのことを書いてください〉

 真相に迫るべく、さらに文通を続けた。カミンスカスからの手紙をはじめ、事件の公判資料や積水ハウスの調査報告書などをもとに、順を追って彼らの動きを整理する。なお前号と同じく、書簡は文意を変えない範囲で誤字脱字などを修正した。

 カミンスカスから届いた2通目の書簡には、銀座のアパレル業者「エマイユホールディングス」のオーナー、横澤弘人(仮名)との出会いについて、次のように記されていた。

〈今回の事件(セキスイ)の前に、前年10月頃からエマイユの横澤が本物件を担保に20億円を借入するという流れだった〉(2024年8月8日消印)
地面師たちが営業を停止して久しい旅館「海喜館」に狙いを定めたのは、2016年10月頃である。犯行グループは、年が明けた17年2月の女将の入院を境に、本格的に動き出した、と前号に書いた。犯行グループの中には、事件解明のキーパーソンがいる。それが、カミンスカスに計画を持ち込んだ横澤である。

 初めは、エマイユの横澤が600坪におよぶ海喜館の敷地を担保に銀行から融資を受ける計画を立て、借入先を探そうとカミンスカスに話を持ち掛けたという。書簡にはこうもあった。

〈私がこの物件を知ったのは土井の事務所に行った時に、物件資料を目にして、土井に“物件の元付けを教えてください”と言ったところ3社程のブローカーを介してエマイユの横澤(太田)にたどりつきました〉(同)

  前号に書いたように 、書簡にある〈元付け〉とは、不動産の所有者から取引を依頼されている者を指し、エマイユの横澤がこれにあたるという。不動産取引では極めて重要な役割を担う。

 一方、土井は地面師事件の主犯格の一人として懲役11年の判決を受けた土井淑雄である。もともとカミンスカスとは10年来の交流があり、互いに地上げの現場で協力し合ってきた間柄だった。

〈土井は今から10年程前(2014年頃)に大阪(京都)から出てきて「六本木五丁目物件を買いたいので売主に話をつけて下さい」と言って私に会いに来ました。その時は土井が着手金として2000万円を持ってきました。(中略)私より土井の方が年上なので私は土井の事を兄のように慕う様になりました〉(10月17日消印書簡)

 カミンスカスは今になって〈土井が黒幕だとは思いもよらなかった〉(同)と臍を噛む。

 カミンスカスは横澤から海喜館の取引を持ち込まれる少し前まで、別名の太田(仮名)を名乗っていた横澤本人と一度会っているという。カミンスカスは土井を通じて横澤と再会し、海喜館の地面師詐欺にかかわっていく。

 当初、横澤が持ち掛けたように、土地を担保に他者から融資を受けようとすれば、とうぜん地主の承諾が前提だ。つまり五反田の海喜館の取引において横澤は、旅館の女将である海老澤佐妃子から依頼されたことになる。少なくともカミンスカスはそう信じてきた、と何度も手紙に書いてきた。

 海喜館の取引では、予定していた20億円の借り入れのうち、関西の畜産業者グループが、2億円を用意したという。この業者は米国の牛肉を輸入する食肉卸事業を中核とし、建設から不動産にいたる都市開発まで手を広げ、関西で一大企業グループを形成してきた。そのグループもまた、一儲けしようと取引に一枚噛んでいたのであろう。

※本記事の全文(約1万2000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(森功「 逮捕を逃れた仕掛け人の豪遊生活 地面師 獄中からの告発 」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・なりすましだと分かった上で
・〈エマイユではだめ〉
・〈司法取引したのでは〉
・名前を何度も変更
・警察に呼ばれて横澤の話を
・本店登記は鉄鋼ビルに
・後継者不在と老老介護の末に
・無関係の手形を振り出し
・1億円超の損害賠償請求
・発足した「被害者の会」
・「横澤は行方知れずだ」
・数千万円をキャバクラに

 

この記事は短期集中連載の中編です。前編・後編も「文藝春秋PLUS」に掲載されています。

[前編]積水ハウス55億円詐欺事件

[後編]騙し取った55億円の行方

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする