憲法9条を変えなくても自衛隊法を改正するだけで、自衛隊は軍隊として活動できる/倉山満

―[言論ストロングスタイル]―

1954年の自衛隊法施行以来、自衛隊は行動や権限を個別に定めるポジティブリスト方式を基本としてきた。憲法9条改正を巡る議論では、ネガティブリスト方式への転換の是非も主要な論点となっているが、与党内の見解はなお定まっていない。こうした状況について、憲政史研究家の倉山満氏は「自民党の見解には落胆した」としつつも、「今ごろになってマトモな議論を突きつけられて慌てている」現状を歓迎する(以下、倉山満氏による寄稿)。
日本国憲法の文字を一文字たりとも変えさせるか! 特に9条を! と主張する勢力、いわゆる護憲派が猛威を振るった時代からすると、隔世の感である。国会で憲法9条改正が堂々と議論できるようになった。

かつて護憲派は、憲法審査会そのものを開かせなかった。「憲法改正を論議することは、憲法改正につながる」などと称して。この人たち、日本国憲法の文字を一文字でも変えれば戦争になると本気で考えていた。少なくとも護憲派の議員は、そういう支持者の声を無視できなかった。

憲法改正は、衆参両院の三分の二の賛成が無ければ発議できず、その上で国民投票の過半数の賛成を得なければならない。確かに昭和・平成初期は護憲派が三分の一の数を確保し、拒否権を行使し続けてきた。

しかし、二十一世紀になり、安倍晋三超長期政権になると、護憲派は三分の一の数を確保できなくなってきた。そして与党内護憲派の公明党が高市早苗内閣になって政権離脱、代わって「推進力」を自負する日本維新の会が連立入りした。日本維新の会は野党時代から国民民主党とともに、憲法論議をリードしてきた。

ようやく憲法審査会で、かなりマトモな議論ができるようになった。その論点の一つが「合憲自衛隊」「新自衛隊法」である。
昨年、私が理事長兼所長を務める救国シンクタンクでは、小川清史編著『合憲自衛隊』(横山賢司共著。ワニブックス)をまとめ、私も寄稿した。その趣旨は、「憲法9条を変えなくても自衛隊法を改正するだけで、自衛隊は軍隊として活動できる。逆に憲法9条を改正しても自衛隊法を変えなければまったく意味が無い」である。

さらに詳述すると、軍隊とはネガティブリストで行動できなければならない。すなわち、禁止されたこと以外はやって良い、行動の自由がある。ところが今の自衛隊は許可されたことだけをやって良い、ポジティブリストである。何かしたいことが出てきた時に、いちいち、法律を作らなければならない。ただ、自衛隊法には第88条がある。自衛隊法第88条には、防衛出動が発令された場合、「わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする」とある。つまり、軍隊として行動して良いと書いてある。

そこで救国シンクタンクでは、いったん第88条だけを残して既存の自衛隊法を全否定、改めて必要な条文だけで再構成した「新自衛隊法」を提示した。

現行の自衛隊法は、適用除外という制度がある。防衛出動が発動されたら、平時の法の適用を除外される。たとえば、「墓地埋葬法では火葬や埋葬を行う場合は市区町村長の許可がいるが、防衛出動で死亡した自衛隊員には適用しない」のように。いちいち、根拠規定を書いている。つまり、事前に法文で規定されていない事例に関しては、現場の判断で行ってはならない。

あるいは電波の管理は総務省の管轄だが、電波法の一部を適用しない。つまり要請すれば、使わせてもらえる法体系になっている。

およそ普通の国ではない。ちなみに銃砲刀剣類所持等取締法の適用除外で、自衛隊は武器を所持して良いことになっている。

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