旅行先の景色やホテルでのひとときなど、旅の思い出をリアルタイムでSNSに投稿する人も多いはず。しかし、その何気ない投稿がきっかけで、自宅が空き巣に狙われてしまう可能性もあるという。先日、公開情報から標的を特定し、プロスポーツ選手の自宅を狙っていたとされる窃盗グループの関係者3人が、アルゼンチンで逮捕された。【写真】「決めポーズ」する逮捕された3人、”盗んだ貴重品”とともにパシャリ
『Fox News』によるとアルゼンチン当局は先日、アメリカで指名手配されていたチリ人の男3人を逮捕。3人は、プロスポーツ選手の豪邸ばかりを狙って空き巣を繰り返していたとされる南米の窃盗グループのメンバーとみられているという。
米連邦検察によると、このグループは、NFLカンザスシティ・チーフスのパトリック・マホームズ選手や、テイラー・スウィフトの夫としても知られるトラビス・ケルシー選手、NBAマイアミ・ヒートのボビー・ポーティス選手らの自宅で発生した侵入窃盗事件への関与が疑われているとのこと。さらに、容疑者2人は、アルゼンチンの元テニス選手フアン・マルティン・デル・ポトロ氏の自宅で起きた空き巣事件にも関与したとして逮捕されているという。
捜査当局によると、グループは公開されている試合日程や位置情報をもとに標的を選び、選手が試合や遠征で不在にしているタイミングを狙って犯行に及んでいたとのこと。FBIも、国際的な窃盗グループが事前に住人の生活パターンを調べて犯行を計画していると警鐘を鳴らしており、旅行中であることをSNSに投稿しないよう注意を呼びかけている。
こうした被害は、豪邸を持つセレブや著名人だけが狙われるものと思われがちであるものの、一般の家庭も同じ手口で狙われているという。
最近では、ロサンゼルスのコンテンツクリエイターが旅行中に自宅へ侵入され、数万ドル相当の高級ブランド品を盗まれる事件も発生。彼女はSNSで旅行中であることを発信しており、その情報が犯人にとって「家が空いている」と知る手がかりになったとみられている。
また、本人がSNSに投稿しなくても、家族による投稿が留守のヒントになることも。パートナーが空港の位置情報を投稿したり、自宅前で撮った孫の写真を公開したり、近所の人が「今、旅行中みたいだよ」と話してしまったりする可能性もあるという。同メディアは、他人がSNSで発信する内容まで完全にコントロールすることはできないため、旅行前には家族とルールを決めておくことが大切だとしている。
さらに『Yahoo Travel』の取材に応じた「Security.org」の主任アドバイザーで、元SWAT隊員のジーン・ペトリーノ氏は、SNSへのリアルタイム投稿について次のように警告している。
「リアルタイムでのSNS投稿は、デジタル時代において見落とされがちなセキュリティリスクのひとつです。多くの人は“思い出の瞬間を共有している”だけだと思っていますが、実際には、自分の行動や生活パターンをリアルタイムで知らせる地図を公開しているようなものなのです」
コロンビア大学でサイバーセキュリティを教えるジョセフ・スタインバーグ氏は、「旅行中、人は自分の趣味や利用するホテル、そして誰と一緒にいるのかといった情報を無意識のうちに公開してしまうことがあります」と指摘。第三者がリアルタイムの位置情報を把握していれば、それを利用して、“本人ではなく周囲の家族や知人をだます”ことも可能だという。
たとえば、家族に「その場所で本人が誘拐された」と偽りの連絡を入れ、身代金を要求するケースもあり、実際の位置情報を悪用することで、詐欺の内容はより現実味を帯びてしまうとのこと。
もちろん、旅行中のSNSを完全にやめる必要はないものの、専門家たちは“投稿するタイミング”が重要だと指摘している。スタインバーグ氏は、「旅行の写真は帰宅してから投稿しましょう。空港での遅延など、移動中の情報も家に戻るまでは発信しないことが大切です」と話している。
また、インスタグラムストーリーズのように24時間で消える投稿も同様で、リアルタイムで共有するのではなく、自宅が空いている時間が終わってから投稿するほうが安全だという。さらに、位置情報タグをオフにしたり、複数の場所を巡る旅行では投稿をあえて遅らせたりするなど、発信の仕方を工夫することも大事とのこと。
実際に、2016年に公開された『NBC New York』の調査では、ニューヨーク州とニュージャージー州で有罪判決を受けた空き巣犯500人に聞き取りを行ったところ、10%以上がSNSを使って標的を探し、犯行のタイミングを見極めていたと回答したそう。
「誰かが“7日間留守にする”と投稿すれば、それは7日間の侵入する隙を作るということだ」
犯罪者による犯行は、必ずしも綿密に計画されたものとは限らず、時にはSNS上に残された何気ない情報が、狙うきっかけになってしまうという。また、同調査は10年前のものであることから、SNSがより生活の一部となりつつある現代では、公開される情報が犯罪者に利用されるリスクはさらに高まっている可能性があると言えるはず。