「毎月1人ずつ誘拐」「手帳にはヤバすぎる5文字」“12歳少女との結婚”を本気で夢見た「22歳男の末路」(昭和21年の事件)

〈「手帳にヤバすぎる5文字」お金持ちの少女を誘拐しただけじゃない…《住友令嬢誘拐事件》逮捕後された22歳男の「歪んだ欲望」(昭和21年の事件)〉 から続く【写真】この記事の写真を見る(2枚)戦後まもない1946年、住友財閥当主の12歳の長女が下校途中に誘拐された。犯人は、半年前にも良家の令嬢を連れ去っていた22歳の男・樋口芳男だった。

 逮捕後、彼が口にしたのは「私は11、12歳の少女にしか情熱を燃やすことができなかった」という衝撃の供述。捜査が進むにつれ、少女への異常な執着と、周到に練られた犯行の実態が浮かび上がる。

「住友令嬢誘拐事件」のその後を、鉄人社の文庫新刊『 戦後まもない日本で起きた30の怖い事件 』よりお届けする。(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆◆◆
誘拐から4日後の9月21日15時半、長野県西筑摩郡吾嬬村(現在の木曽郡南木曽町大字吾妻)に住む老婆が、松本発の名古屋行きの列車に乗り、新聞を広げた。彼女は邦子さん誘拐に関する記事もくまなく読み込む。

 ほどなく列車が塩尻駅に到着。と、前の座席に11、12歳の娘が飛び込んできた。「ねずみ色の帽子に下駄履き」など、いま読んだ記事とそっくりな姿にぎょっとしていたところ、続いて22、23歳の国民服を着た新聞の写真に酷似した男が少女の隣に座った。
2人は連れ去られた邦子さんと誘拐犯の男に違いない。確信を持った老婆は、列車が次の三留野駅(現・南木曽駅)に着くや、駅前駐在所に届け出た。

 警察は多くの捜査員を動員し一帯を捜索。22日、岐阜県恵那郡付知町(現・中津川 市)の旅館に宿泊を頼んだが断られた、少女連れの男がいたことを突き止める。そして、各家を一軒一軒当たり、2人が同町の雑貨商宅に泊まり込んでいることを特定。
翌23日午前11時、付知署員が樋口を逮捕するとともに、邦子さんを無事に保護した。

 事件解決を受けて、新聞には「ただもう怖くて、一刻も早くお家に帰りたくて…」という邦子さんの談話が載ったが、彼女が新聞記者と対面したときに語った言葉は意外なものだった。

「千葉で映画を見たの。面白かったわ。生まれて初めてなの、映画を見たのは。あの人が、あなたは狙われているから守ってあげるという言葉を信じていたの」

「あの人が本多良男で私が妹のひろ子。何だかおかしかったけれど、しまいには本当のお兄さんのような気がしてきたわ。千葉では化粧品セット、名古屋ではスカートを買ってくれたの。退屈するとお人形を作ってくれたり、とても優しくしてくれたので、寂しいと思いませんでした。あの人がそんな悪い人とは…」

 被害者がこのように語る樋口芳男とはいったい何者なのか。

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