歴史観なき高市首相は「真正保守」から程遠い(上)

近現代史研究の第一人者、保阪正康が緊急警告

改正皇室典範は、反天皇的、反国民的、反憲法的だ

「穏健保守」を自称する高市首相が、矢継ぎ早に軍事と治安の強化、象徴天皇制の改変に乗り出している。その政治姿勢は「保守」とはかけ離れた「国家主義的右派」だと喝破する保阪正康氏が、歴史からの視点で、現政権の危険性を射抜く。

■権勢に驕る政治権力の横暴

7月15日、改正皇室典範が成立した。私はこれを一時的な権勢に驕る政治権力の横暴であると考える。

(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ。

(2)旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎え、養子の子である男子は皇位継承資格を持つ。

以上を2本の柱とする部分的改正であるが、そもそも当事者である天皇と天皇家の意見を聞かず、旧宮家の意見も聞いていない。さらに憲法が、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基づく」と定める、その国民の意見も聞かないままに、高市政権と、その周囲に存在すると思われる男系男子による皇位継承に固執する勢力が強行した暴挙である。

2月の衆院選で史上稀な圧勝を得てから、「1強」の絶対安定多数と、相応の支持率を背景に、高市早苗政権は何を目指しているのか。軍事と治安の強化、そして象徴天皇制の改変に傾斜していく政権の動向が意味するものは何だろうか。まず、昨今の政治危機の実相を点描しておきたい。

昨年11月の台湾有事発言以降、中国との緊張関係に改善は見られない。覇権主義を内包した隣国であっても、いや、であるからこそ、平和外交は不可欠である。日中国交正常化以来、これほど長期間にわたる関係悪化は初めてであろう。高市首相の発言は、歴史観を欠いた「嫌中」の時代風潮に呼応したものとも考えられる。日本の安全保障を危うくし、日中の経済関係に打撃を与え、さらなる排外主義を喚起した政権の責任は重いと言えよう。

「日本成長戦略」「日本の勝ち筋」などと呼号しているが、政府は経済危機の本質に向き合おうとしているのだろうか。食料品消費税減税が閣議決定されたが、国民生活を守ることよりも政権延命のための方策のように感じられる。財政健全化の立場から党内の異論も出始めた。

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