粉飾額は約53億円。2,000億円を超えたカネボウと比べれば、およそ40分の1にすぎません。しかし、この事件は東京証券取引所を史上初の全銘柄取引停止に追い込み、堀江貴文社長(当時)は実刑判決を受けました。2006年のライブドア事件です。その衝撃は、会計・開示ルールや罰則の見直しを強く後押ししました。なぜ、この事件は日本の証券市場を揺るがしたのでしょうか。読み解くカギは「そもそも利益とは何か」という、決算書のいちばん根っこにある問いです。投資家はどこを見れば異変に気付くことができたのでしょうか。ライブドア事件の手口をたどることで、損益計算書に潜む「危ない利益」を見抜く基本が学べます。【画像付き記事全文はこちら】
2000年代半ば、ライブドアほど世間の注目を集めた企業はなかったでしょう。堀江貴文社長(当時、以下同じ)のもと、インターネット事業を軸にM&A(企業の合併・買収)を繰り返して急拡大し、2005年にはニッポン放送の株式を大量取得してフジテレビと争奪戦を繰り広げました。プロ野球参入の表明や選挙出馬もあり、連日メディアに登場します。1株を100株にするような大幅な株式分割を繰り返して個人投資家を呼び込み、株価は急騰。時価総額は一時9,000億円規模に達したとされます。
その絶頂は、あっけなく終わりました。
2006年1月16日夜、東京地検特捜部がライブドア本社などに強制捜査に入りました。翌17日から株式市場は大混乱に陥り、1月23日には堀江社長ら経営陣が証券取引法違反の疑いで逮捕されます。そして4月14日、ライブドア株は東証マザーズから上場廃止となりました。強制捜査からわずか3カ月です。
罪に問われたのは、大きく2つ。買収をめぐる虚偽の発表などで株価をつり上げた「偽計・風説の流布」と、決算書の数字を偽った「有価証券報告書の虚偽記載」でした。
本稿で注目したいのは後者、つまり粉飾決算です。