カンボジアでの臓器移植を有償であっせんしたとして、一般社団法人「国際医療相談室」(東京)の男らが逮捕された事件は、患者が帰国後に通院先を確保できず、一時的に体調を悪化させるなど、不透明な海外移植の危うさを改めて浮き彫りにした。専門家は、国が渡航移植の実態を継続的に把握すべきだと指摘する。(立原朱音)
「死を意識した。私のように苦しむ人が二度と出ないようにしてほしい」。同相談室のあっせんで昨年5月、カンボジアで生体腎移植手術を受けた千葉県の60歳代男性は、警視庁の捜査員にそう話したという。
移植患者は、他人の臓器への拒絶反応を抑える免疫抑制剤を定期的に投与する必要がある。警視庁によると、男性は相談室の菊池仁達(ひろみち)被告(66)(臓器移植法違反で起訴)から「アフターケアは万全」と聞き、帰国後の通院先は心配ないと思っていた。
だが、相談室の紹介で訪れた愛媛県内の病院には、「もう来ないでくれ」と言われ少量の抑制剤しか出してもらえず、菊池被告と訪れた2か所目の東京都内の病院では診察を拒否された。菊池被告には対応を打ち切られた。
男性はそれから約2か月間、千葉県内などの計10か所の病院を巡った。「海外移植患者は診ない」と言われ続け、体重は約25キロ減少した。捜査員に「渡航移植を受けたことは大きな過ちだった」と語ったという。
警視庁によると、菊池被告が渡航移植に関わった5人の患者(40~70歳代)のうち、男性を含む4人は帰国後、紹介された病院から通院を断られ、一時体調を悪化させた人もいた。
臓器移植に詳しい独協大の神馬幸一教授(刑事法)は「厚生労働省が渡航移植の実態を定期的に情報収集できるようにすべきだ」と訴える。
同省は2023年、菊池被告が理事長だったNPO法人「難病患者支援の会」(解散)による臓器の無許可あっせん事件を受け、医療機関を対象に渡航移植の実態調査を実施。海外で移植後に国内で通院中の人が543人いると判明したが、調査はその後行われていない。