不動産経済研究所が発表した2026年上半期(1~6月)の首都圏の新築マンションの平均価格は、前年同期比13.1%増の1億135万円となり上半期として初めて1億円を突破、2年連続で過去最高を更新した。日銀の利上げに伴って住宅ローンの金利も上昇局面に入るなか、それでもマンション価格の高騰には歯止めがかかっていない。全体の値上がりを牽引しているとされるのが、都心3区にそびえ立つタワーマンションだ。物件価格が数億円を超えるのが当たり前になっているが、なかでも最上階にあるペントハウスは別格である。
ペントハウスとは、そのマンションの中でも特別仕様の高級住戸である。一般にマンションの最上階ワンフロアを数戸で占めるため、専有面積は数百平米を超える広さで、屋上テラスや専用エレベーターなどが備わっていたりする。当然、価格も破格だ。
「都心3区ともなると数十億円から100億円くらいの価格になり、港区にある麻布台ヒルズのペントハウスは200億円とも言われています。こうした超高額な物件は、SUUMO(スーモ)のようなネットの物件紹介サイトにはほとんど出てきません。一般向けには公開販売せず、超富裕層に個別に案内していくスタイルです。過去に高額物件を購入した層の名簿などが活用されていると考えられます」
そう話すのは、『東京23区中古マンション格差の地図帳』(宝島社)の監修者で、不動産ジャーナリストの榊淳司氏だ。一般には公開されない“見えない市場”で、いったい誰がこうした物件を買っているのか。
「桁違いの超富裕層であるのは当然で、2億~3億円くらいの物件だとまだ日本の富裕層が中心ですが、何十億円から100億円というレベルになると、もう外国人が半数を占めるようになります。“2桁”億円ともなると住宅ローンが組めなくなるので、現金一括払いがほとんどです。
100億円クラスの物件の場合、投資で買うわけでもない。オーナーの資産状況が怪しくなったら売るのでしょうけど、売ろうと思っても簡単には売れません。売りたいときに売れないのでは、投資とは言えません。お金があり余っていて、日本で寿司を食べるためだけにプライベートジェットで来て、リムジンのお迎えでペントハウスに直行して、銀座の名店から寿司職人を呼んで目の前で握ってもらって食べるような層が買う。ジャック・マー氏(アリババグループ創業者、ソフトバンクグループ元取締役)のような超富裕層のイメージですね。100億円クラスのペントハウスとなると、日本人で買えるのはソフトバンクの孫正義氏レベルの超富裕層に限られるでしょう。投資というより“趣味”の別荘として買うのです」(以下、「」内コメントは榊氏)
しかし、簡単には売れないといっても、資産価値は極めて高いわけで、それが値上がりした場合、時間をかけてでも買い手をみつければ、莫大な利益を生むのではないか。
「もはやマーケットとは無関係な物件ですから、そうはならないと思います。中国の恒大集団の会長だった許家印氏が香港に持っていた豪邸を例に挙げましょう。許氏はかつて中国でも個人資産額1位にランキングされるほどの大富豪でしたが、不動産バブルがはじけて破産し、粉飾決算や資金調達詐欺などで逮捕・拘留され、香港の高台に持っていた豪邸を債権者に差し押さえられました。これがなかなか売れず、評価額が約8億8000万香港ドル(約180億円)だった物件が、およそ半値の4億7000万香港ドル(約97億円)でしか売れなかった。
なぜこんなに下がるのかというと、こういう物件を買う層は、前の所有者が住んでいた家に居抜きで住むなんてありえないからです。家屋は解体して新たに建て直す。ピカピカの築5年でも全部壊して好みの家を建てる。マンションだったらフルリフォームするでしょう。買う人は、“家”ではなく“土地”や“権利”を買うという感覚なので、いざ売るとなったら土地の評価だけになり半値くらいになる。だから、投資ではなく、“趣味”なのです」
“市場”というものが存在しない世界なので、こうした事態になるのだという。