「精神科病院から退院できない」困り果てた患者の前に現れた「助っ人」の正体…全国で利用可能、しかも無料の知られざる仕組み

札幌市に住む30代の深沢洋平さん(仮名)は19歳のとき、精神科病院に入院させられた。【写真】「私をここから出して」生活保護で“がん末期”の男性、届かないSOS 年間800万円の税金が、本人の望まない生活に投じられる不可解
学校の成績は優秀だったが、自閉スペクトラム症(ASD)や感覚過敏、偏食などがある。学校でいじめを受けたこともあり、強迫性障害や不安障害などを併発した。荒れた10代を過ごし、手に負えなくなった両親が入院させたのだった。

 いったん退院したものの、再び家で暴れ、21歳で再入院。「看護師から暴力や暴言を受け、反抗的な態度を取ると『生意気だ』と言われ、カギのかかった保護室に入れられました」と話す。

 退院したいが、親は自分の言うことを聞いてくれない。「誰かに相談したい」。病院のソーシャルワーカーにそう漏らすと、ある電話番号を教えられた。わらにもすがる思いで電話した深沢さんのもとを訪れた助っ人の正体とは―。(共同通信=市川亨)

 ▽「もっと入院していたかも」

 深沢さんが頼ったのは「精神保健当番弁護士」という仕組みだ。経済的に余裕がないといった人を対象にした日本弁護士連合会(日弁連)の「法律援助事業」の一つ。各地の弁護士会で精神科の入院患者からの相談電話を受け付けていて、電話があると、登録している弁護士が病院に出向き、相談に乗ってくれる。弁護士が支払う会費を主な財源にして運営されていて、利用は無料だ。
深沢さんが電話したのは、札幌弁護士会。事情を説明すると、本当に弁護士が無料で来てくれた。「退院したい」。そう話すと、「退院請求」という制度があることを教えられた。

 これは、精神保健福祉法という法律に基づく制度で、精神科の入院患者は都道府県や政令指定都市に退院や処遇改善を請求できるようになっている。医師や法律家、有識者らでつくる各自治体の「精神医療審査会」が請求を審査する。

 深沢さんは代理で請求してもらえるよう弁護士に委任。「審査結果が出るまで1カ月ぐらいかかる」と聞かされた。「こんなところ(病院)に1カ月もいられない」。深沢さんはそう思ったが、審査の結果は棄却。

 その後、弁護士を複数回替えて退院請求を繰り返し、入院から約1年たって、ようやく退院が認められた。

 障害者向けのグループホームを経て、深沢さんは現在1人暮らし。作業所に通い、工賃収入と障害年金、生活保護で暮らしている。「病院には、30年ほど入院している患者さんもいた。僕も弁護士に相談していなかったら、もっと入院していたかもしれない」。そう振り返る。

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