逮捕・勾留された容疑者らが取り調べ内容などを記録する「被疑者ノート」を警察が夜間に「回収」する運用について、弁護人から不当だとの申し立てを受け、熊本簡裁(松藤和博裁判官)が3月、容疑者の勾留場所を警察署から法務省管轄の熊本刑務所に変更する決定をしたことがわかった。被疑者ノートに関する警察の運用を巡っては、昨年11月にも勾留場所を警察署から刑務所に変更する同様の司法判断が出ている。
関係者によると、3月に器物損壊容疑で逮捕され、熊本県警熊本中央署の留置施設に勾留されていた男性容疑者(40歳代)は、弁護人が差し入れた被疑者ノートを就寝前に回収され、居室外に保管された。
これを受け、弁護人は、容疑者が「ノートの内容を見られているのではないかと不安感を示している」として、勾留場所の変更を同月23日に熊本簡裁に申し立てた。簡裁は同25日付の決定で、熊本刑務所への変更を認めた。その後、容疑者は同刑務所に移送された。現在、熊本地裁で公判中となっている。
被疑者ノートを巡っては、全国の警察では、「破ってのみ込む」などの自殺や事故を防止するため、就寝する夜間は居室外に保管する運用を行っており、弁護士会側から批判が出ている。法務省によると、拘置所や刑務所などの刑事施設では、居室内で管理し、回収は原則行われていない。
薬物事件で逮捕され、県警熊本北合志署に勾留中の男性(後に不起訴)側が夜間にノートを回収されたとして、勾留場所の変更を申し立てた事案を巡っても、熊本簡裁の別の裁判官が昨年11月、警察署から熊本刑務所に勾留場所の変更を決定したことが明らかになっている。
熊本県警は取材に、「個別の事案には答えられない。今後も運用を変えるつもりはない」としている。
警視庁の留置施設の運用状況を第三者として視察・確認する委員を務めたことがある元裁判官の水野智幸・法政大教授(刑事法)は「(弁護人との自由な接見を保障する)接見・秘密交通権の保障を後押しする決定だ。回収には特別な事情が必要で、警察の運用は妥当性に欠けると考えたのだろう」と指摘。その上で、「精神的に不安定な被疑者もおり、警察が自殺防止など保安上の理由で回収する必要性も一定程度は理解できる。今後、同様の司法判断が積み重なるかどうかが注目される」と話した。