各界の著名人が気になる本を紹介する連載「読まずにはいられない」。今回は書評家、プロインタビュアーの吉田豪さんが『実録! 東映三角マーク宣伝部 義理かく、恥かく、人情かく!?』(福永邦昭著、尾形敏朗構成)を取り上げる。AERA 2026年7月20日号より。【写真】映画宣伝のレジェンド・福永邦昭の人生を振り返り、カツドウヤの生態を浮き彫りにする一冊* * *
ページを開くと目に入る、〈本書の内容について、東映株式会社は一切関与しておりません〉という不穏な一文。どうやらこの本、東映から直前でNGが出て写真が使えなくなったみたいなんだが、おかげで著者所有の貴重な写真が大量に掲載されたから結果的には良かったと思われる。
そして、いまは真っ当な会社になった東映にしてみれば、「義理かく、恥かく、人情かく」(東映の三角マークはその意味だとボクに教えてくれたのは山城新伍だった)時代の表沙汰にしたくないような話ばかり5代目東映宣伝部長が振り返ってるんだから、この内容でOKが出ると思っているのがどうかしてるよ!
古くは「太陽の王子 ホルスの大冒険」から「仁義なき戦い」「トラック野郎」、さらには「北京原人 Who are you?」まで、基本的には自分が広告宣伝に絡んだ作品について語る本だが、いちばん情報量が多いのは兄弟分・千葉真一のこと。しかもデビューから晩年まで付き合いがあったから、千葉真一がジャパンアクションクラブを日光江戸村に売却するに至るゴタゴタにも絡んできたのである。
千葉は〈いわゆる高利貸しから金を借りて、それが焦げついてしまった。返済が月々の利子だけで5百万円。JACが頼んでいた税理士は恐ろしくなって逃げた〉。そんな状況下で、知り合いの税理士となんとか処理して千葉の命を救ったはずなのに、千葉の映画制作に巻き込まれてとんでもないことになるわけだ。
〈千葉のマネージャー……こいつが僕をだましたんだけど、その後、別件で逮捕されて刑務所に入った〉〈彼曰く、千葉の肖像権を静岡のやくざ組織に売ってしまったと。制作をはじめる前に肖像権を取り返しておかないと難癖がついてややこしくなるに決まっているから、5千万円で取り返したいと頭下げてきたんですよ。借用書には、千葉の名前と実印が押してあった〉
その後、著者は映画もポシャって廃人同然になり自殺も考えたりしたのに、何も気にせず新しいビジネスを持ちかける千葉がすごすぎました。
よしだ・ごう◆1970年生まれ。書評家、プロインタビュアーにして連載が20を超える人気ライター。著書に『超・人間コク宝』『書評の星座 紙プロ編』『吉田豪の部屋の本 vol.1』『帰ってきた 聞き出す力』など。
※AERA 2026年7月20日号