朝ドラにおける“夫役”は、単なる恋愛要素ではなく、時代観や価値観、そして夫婦のあり方を映す装置でもある。朝ドラにおいて夫は「支える側」に回ることが多いが、『まんぷく』の立花萬平・長谷川博己はむしろ物語を牽引する“裏ヒロイン”的存在だった。第4回。(文・阿部早苗)
脚本:福田靖
演出:渡邊良雄、安達もじり、保坂慶太、松岡一史、中泉慧
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、瀬戸康史、桐谷健太、岸井ゆきの、橋本マナミ、松井玲奈、浜野謙太、中尾明慶、深川麻衣、呉城久美、金井勇太、毎熊克哉、菅田将暉、田中哲司、加藤雅也、牧瀬里穂、イッセー尾形、奥田瑛二、片岡愛之助、橋爪功、松坂慶子
【作品内容】
福子(安藤サクラ)は大阪のホテルで働き始め、英語力で昇進。
母・鈴(松坂慶子)の執着や姉・咲(内田有紀)の死、萬平(長谷川博己)の冤罪逮捕を乗り越え結婚する。
戦中は疎開と徴兵の不安に揺れ、終戦後は焼け跡から闇市で生き抜き印鑑商売を開始。
仲間も増え、新天地へ踏み出す。
【注目ポイント】
夫役が物語を牽引した作品として、異彩を放っているのが2018年放送の連続テレビ小説『まんぷく』である。
その中心にいたのが、長谷川博己演じる立花萬平だ。
本作は、戦前から戦後にかけての激動の時代を背景に、のちに世界的発明となるインスタントラーメン誕生までの道のりを描いた日清食品創業者と、その妻をモデルにした物語。
ヒロイン・今井福子(安藤サクラ)が、幾度もの困難に直面しながらも夫を信じ、ともに未来を切り拓いていく姿を描いた、挑戦と夫婦愛のドラマである。
長谷川が演じた萬平は、発明好きの理系青年。
丸眼鏡にエプロンという一風変わった風貌で、商売には驚くほど不器用、恋にも奥手だ。
しかしその一方で、発想力と行動力はずば抜けており、ここぞという局面では常識を超えた大胆な決断を下す。
そのアンバランスさこそが、“ダメなのにかっこいい”萬平という人物像を際立たせていた。
事業は失敗の連続で、戦時中の混乱や冤罪による逮捕・投獄といった過酷な運命にも翻弄される。
それでも彼は、発明への情熱だけは決して手放さない。
理想に向かってもがき続ける姿を、長谷川は豊かな表情と繊細な感情表現で丁寧にすくい取った。
その結果、「可愛すぎる」「癒される」「素敵すぎる」といった声が視聴者から相次いだ。
しっかり者で行動力のある福子に対し、「むしろ萬平さんのほうがヒロインでは?」と評されるほど、その存在は際立っていた。
いわば“裏ヒロイン”として物語を力強く牽引し、長谷川博己の演技力の幅と奥行きを鮮やかに印象づけた、記憶に残る夫役だったと言えるだろう。