マッチングアプリで出会った相手に誘われた飲食店で、ぼったくり被害に遭うケースが相次いでいる。指示役が秘匿性の高い通信アプリで店員や取り立て役などを管理しており、警察は「匿名・流動型犯罪グループ(匿流(トクリュウ))」が関与しているとみて警戒している。(立原朱音)
千葉県の会社員男性(23)がアプリで知り合った同年代の女性と会ったのは、2024年夏だった。「知っている店がある」と案内され、「飲み放題5000円」という東京・新宿のバーに入った。
女性は席に着くなり、「トランプゲームで負けたら飲もう」と言い、酒をデキャンター四つ分注文した。グラス120杯分の量で、入店から約1時間半滞在し、請求額は34万円に上った。店員からは「その酒は飲み放題の対象外」と言われた。
男性は近くのATM(現金自動預け払い機)で現金を下ろして代金を支払った。だが、店員らは「あなたのせいで他の客の対応ができず、キャンセルが出た」とさらに金を求めてきた。
その後、男性は店員らとサウナで夜を明かし、朝から消費者金融3社を巡って借金させられた。支払額は総額で約106万円に上り、解放された時には入店から20時間以上がたっていた。精算時に慌てた様子を見せていた女性とは連絡が取れていない。男性は「女も仲間だと気付けなかった。許せない」と憤る。
アプリを使ったぼったくりは、組織的に行われているとみられる。警視庁は昨年5月~今年4月、東京・渋谷のバーの元経営者と従業員ら男女計19人を詐欺や都ぼったくり防止条例違反容疑で逮捕した。
捜査で判明した手口は、「デート役」の女が男性を店に誘い、酒を大量注文して高額を請求する点がおおむね共通していた。渋谷署管内では昨年、ぼったくり被害の届け出が約100件あり、同庁は、このうち半数ほどがこのグループによる被害とみている。
同様の被害は全国で相次いでいる。大阪府警は先月、アプリで知り合った男性を大阪市内のバーを装ったレンタルルームに誘い出し、高額な飲み物を注文するなどして87万円をだまし取ったとして、男女4人を詐欺容疑で逮捕したと発表した。札幌市や横浜市のバーでも、過去に同様の事件が起きている。