SNSでつながり、実態が見えにくい犯罪組織が活動をエスカレートさせている。こうした匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)と呼ばれる組織から熊本県民を守ろうと、熊本県警は今年4月、組織犯罪対策課内に対策室を新設した。初代室長の下田耕士さん(48)は県警内の担当の枠を超えた捜査で、犯罪組織を壊滅に追い込もうと職務にまい進している。【動画】高齢女性に詐欺電話、息子をかたる男が「ゴホッ」とせき込み…福岡県警が音声を公開
名称は「匿名・流動型犯罪グループ対策室」。所属する警察官は、生活安全部の少年担当や交通部の暴走族担当などから横断的に情報を集める。集約した情報、これまで蓄積してきた知見を捜査の前線に提供し、指示役や事件の首謀者といった中核的人物の逮捕につなげるのが役割だ。
トクリュウの手口は多様化しており、人の命を奪うような悪質な事案も起きている。「トクリュウの犯罪は身近に潜む。匿名性の壁を打ち破る捜査に力を入れていきたい」と力を込める。
「耕士」という名前には「偉くなったとしても、農民と一緒に畑を耕し、汗を流す武士のような人になりなさい」との願いが込められている。真面目に生きている人が理不尽な目に遭うことが許せないという性格だったこともあり、警察官を志望し、大学卒業後の2000年に熊本県警の巡査を拝命した。
県警の研修で、大切な財産をだまして奪い取る詐欺は悪質性が高いと学んだ。知能犯に関心を持ち、所轄署などで捜査の経験を積んだ。
警察官になって数年たった頃、難しい事案に挑んだ。オンラインゲームを舞台にした外国人留学生の資格外活動に関する案件だった。
先輩の助言で朝から晩までゲームに参加し、疑わしいキャラクターを尾行した。一つのアカウントで母国にいる多数の人物をゲームに参加させてサーバーをダウンさせたとして、留学生1人を電子計算機損壊等業務妨害の疑いで逮捕し、この留学生の資格外活動を立証した。「型にとらわれず、自由な発想で捜査してもいい」。この時に学んだ心構えを今も大切にしている。