警察官をかたり「口座の調査」などと偽って資産をだまし取る「ニセ警察詐欺」で、高齢者らに現金の代わりに金地金(金塊)を用意させる手口が後を絶たない。金の価格高騰や持ち運びやすさが背景にあるとみられ、警察は警戒を続けている。(丸山滉一、木村雄二)【図解】金地金(金塊)の特殊詐欺被害
京都市内の80歳代女性宅に、警視庁の警察官を名乗る人物から電話があったのは昨年11月だった。「資金洗浄事件を捜査している。あなたに逮捕状が出ている」という内容だった。
京都府警によると、女性は電話の相手からSNSでのやり取りに誘導され、通話機能で「犯罪に関与している可能性があるので資産を調べる」と告げられた。
その後、「資産を差し押さえる」という理由から金を買うように指示され、金塊1キロ・グラム(時価約2200万円相当)を購入。指定された通り自宅の前に金塊を置いたところ、だまし取られた。
電話には郵便局や検察庁の職員を装った人物も次々と登場し、「現金はかさばる」と言って金塊を用意させていたという。
警察庁によると、昨年のニセ警察詐欺の被害額は約1005億円。このうち被害品が金塊の事件は35都道府県で計163件あった。被害額は約58億円(5%)で、前年から急増した。
今年はさらに被害が拡大している。3月末までの被害は暫定値で77件(約35億円)。1月には奈良市の70歳代男性が1億円超の金塊をだまし取られた。5月中旬~今月上旬にも横浜市や静岡県で金塊と現金を詐取される被害があった。
嫌疑をかけてから「身の潔白を証明するため」などと言って資産を聞き出すのが主な手口で、「金塊を購入した資金が金融庁に行く。金融庁でお金を調べる」などとかたるものもある。
これまでの捜査では、犯罪組織が被害者に貴金属販売店で金塊を買わせた上で、自宅の玄関先や公園の滑り台、スーパーの駐車場などに置かせて回収する手口が確認されているという。
金融機関は近年、警察との間で不審な送金の情報共有を強化し、犯罪に使われた口座の凍結を進めている。一方、国内の金価格の代表的指標となる田中貴金属工業の店頭小売価格(1グラム当たり、税込み)は今年3月、3年前の約3倍となる3万円前後まで一時上昇した。最近も2万4000円前後で推移する。