「口の中に眠るお宝」銀歯が1000万円以上の価値に? 貴金属高騰の裏で歯科医院は“赤字治療”の苦境 狙われた銀歯…歯科医師の犯行は業界の悲鳴か

「腹立たしい限りですよ。こんな人が人さまの口の中を触っていたら」

被害を受けたクリニックの理事長は、怒りをあらわにする。

患者の口から取り除いた銀歯や金歯が、勤務していた歯科医師によって密かに持ち出され、現金に換えられていた…そんな信じがたい事件が起きた。

しかし、取材を進めると、歯科医院を取り巻く厳しい現実が浮かび上がってきた。
ある歯科クリニックの控室。防犯カメラの映像には、白衣姿の男が容器を手に取り、そのままポケットに入れて立ち去る様子が映っていた。

さらに2週間後も、同じ男が再び容器に手を伸ばし、中を覗き込みます。今度は目当てのものがなかったのか、容器をもとに戻して立ち去った。

この男は、クリニックに週に1回勤務していた歯科医師。ポケットに忍ばせていたのは、患者から取り除いた銀歯や金歯だった。

男は去年8月、銀歯などを無断で持ち出し、業者に売却して現金化したとして、窃盗の疑いで逮捕・起訴された。
被害にあったクリニックの理事長は、こう振り返る。

クリニックの理事長:(歯科医師が)勤めていた期間1年半にわたって、通常であれば回収される金属がほぼゼロだった。他の医院は何十万、何百万円という回収金額の中で、数千円の回収しかなかったわけはないので。

不審に思った理事長が防犯カメラを設置したところ、持ち去る様子が映っていたのだ。男は理事長に対し「6回にわたり、およそ50万円分を盗んだ」と認め、示談を持ちかけてきた。

しかし理事長は応じなかった。

「こんな金額ではありません。我々にとっても大事な収入源の1つですし、ずっとためているわけですね、売却のタイミングを見計らっているわけなんで」と、実際の被害額はそれをはるかに上回るとみている。
歯科クリニックで取り外した銀歯は、いったいどれほどの価値があるのだろうか。

取材班は、歯科用の金属を専門に買い取っている業者を訪ねた。(※今回の事件とは関係ありません)

全国の歯科クリニックなどから送られてくる、使用済みの銀歯や詰め物。これらは1000度の高温で不純物を取り除かれ、さらに溶かされることで金属の塊へと変わる。

分析器にかけると、驚くべき数字が表示された。

「金が10.61%、パラジウムが15.48%、銀が51.12%という数字が出ています」

銀歯には、銀だけでなく金やパラジウムなど複数の貴金属が含まれているのだ。さらに精製されると、銀歯はピカピカの銀塊へと姿を変える。

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