4月にNetflixで配信が始まったドキュメンタリー『Trust Me: The False Prophet(邦題『サミュエル・ベイトマンの狂気 一夫多妻制カルト教団の闇』)』が、アメリカのモルモン系原理主義カルトで起きた一連の事件を描き、衝撃を与えている。《写真を見る》未成年24人を含む80人の妻を得たFLDS教団のウォレン・ジェフス、ベイトマンの14番目の妻の現在の姿
舞台はFLDS(末日聖徒イエス・キリスト教会原理派)。モルモン教主流派から分裂した原理主義グループで、主流派が否定した”一夫多妻”婚を実践している。
かつて指導者だったウォレン・ジェフスは、未成年の妻24人を含む80人の妻を得たが、12歳と15歳の少女への性的暴行で有罪となり、2011年に終身刑などを言い渡された。それでも信者の一部は獄中のジェフスを”預言者”として崇拝し続けた。
2019年、その空白に入り込んだのが、サミュエル・ベイトマンだった。「天の父の命令」を受けていると主張し、男性信者から女性や子どもを引き取り、自分の”妻”だと宣言し始めたのだ。
海外ジャーナリストが続ける。
「不動産などの事業で失敗した元FLDS 末端信者のベイトマンは、ウォレンが収監された混乱に入り込み、やがて自らを”預言者”と名乗るようになります。FLDSでは、”預言者”の言葉が神の言葉として扱われる。ベイトマンは、ウォレンの作った支配構造を再利用し、少女たちの虐待を続けました」
ベイトマンが取り込んだのは、女性や少女だけではなかった。父親である男性信者が娘を差し出す側に回った点にも事件の異常さがある。そのうちの1人は、預言者への忠誠として、10歳、14歳、17歳を含む4人の娘を”妻”として差し出した。2022年の逮捕時点で20人以上、うち10人が未成年、最年少は9歳だった。
「ベイトマンは『神の意志』や『贖罪』という言葉を使い、男性信者から妻や娘を奪った。性行為を『兄弟の結びつき』の儀式と呼び、 FBI資料には、少女に対して『主のために貞操を捧げるのだ』とサムが諭す記録も残っています。家族が保護者ではなく、共犯者にされてしまったことが、この事件の恐ろしさです」(同前)