徹底的にぶつかりあった男たちの間でいつしか友情が芽生える――一昔前の少年漫画ではありがちな光景だが、現実の世界、特に大人になってからそういう展開は滅多にない。【写真を見る】佐藤優氏が「尊敬に値する敵」と表現した相手しかし写真の二人の関係性においては奇跡的にそんな“化学反応”が起きたのである。
右は「週刊新潮」本誌連載でもおなじみの作家・佐藤優氏。左は弁護士の西村尚芳氏。同じ1960年生まれの二人が最初に会ったのは、2002年、外務官僚だった佐藤氏がいわゆる「鈴木宗男事件」で逮捕された日だった。そう、当時、西村氏は事件を担当する東京地検特捜部検事だったのである。
片や被疑者、片や取調官という立場で対峙した二人だが、取調室で言葉による真剣勝負をしていくうちに、奇妙な信頼関係が生じる。佐藤氏の著書『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』の中では、2004年、佐藤氏の公判時に西村氏と交わした会話や心境が次のように描かれている。
「公判が終わった後、西村氏に声をかけた。
『もうお会いすることはないと思いますが、ほんとうにお世話になりました』
『こちらこそお会いできてよかったです』
『西村さん、あなたは検察庁の良心なんだからちゃんと出世してくださいよ。ご活躍を期待しています』
結局、私は西村氏と一度も握手をしなかった。なぜならば国策捜査というこのゲームで、西村氏はあくまでも私の敵で、敵と和解する余地が私にはなかったからである。しかし、西村尚芳検事は、誠実で優れた、実に尊敬に値する敵であった」
とはいえ、立場が正反対の両者はこれ以降、接点を持っていなかった。が、4年前、ひょんなことから会食をすることとなる。すでに西村氏は退官していた。
そしてこの5月、ついに二人は対談本『特捜取調室 『国家の罠』20年目の再対決』を出すに至る。かつての被疑者と取り調べ担当の検察官が検察や特捜部の在り方について徹底的に議論したという前代未聞の一冊である。写真は同書に関連した対談動画の撮影時のものだ(動画は「新潮QUE」にて公開中)。
それにしても取調室での攻防を経てなお、なぜ二人は互いを認めあっていたのか。『特捜取調室』では、当時の生々しいやり取りとそれぞれの印象が語られている。以下、見てみよう(同書から抜粋・再構成しました)。
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