有力市議があっせん収賄容疑で逮捕された熊本県八代市の新庁舎建設工事を巡る汚職事件では、昨秋以降、不正を示す音声データなどが明らかになり、市議会の調査特別委員会(百条委員会)でも担当職員らの証言が相次いだ。賄賂の授受があったとされるのは2021年6月。同市では、昨夏の市長選などで市政の構図が大きく変わり、告発・追及しやすい状況が生まれたことで、公訴時効(5年)が成立する直前のタイミングで事件が動き出した。■百条委員会の証人喚問を受けた記者会見で、市職員らの証言に反論する成松由紀夫容疑者【写真】工事は16年の熊本地震で旧庁舎が被災したことに伴うもので、人口10万人余りの同市ではまれに見る巨額の公共事業だった。
熊本県警などが7日に同容疑で逮捕したのは市議の成松由紀夫容疑者(54)ら3人。準大手ゼネコン・前田建設工業(東京)などの共同企業体(JV)が工事を受注できるようにしたり、同JVの利益を約11億円増やしたりするよう市職員らに指示した見返りに、同社側から6千万円を受け取った疑いが持たれている。
「成松市議から携帯に電話がありました。『リストにマエケンが入ってないのはなぜか』ということでした」。4月に開かれた百条委の証人喚問。当時の担当課長は、準備したメモを読みながら淡々と証言した。
成松容疑者からの電話は、入札参加が想定される業者のリストに前田建設が入っていない理由を問う内容だった。実績が足りないため外れていたが、元課長は「市議に伝えると恫喝(どうかつ)される」と思い「漏れていたかもしれない」と説明。その後、同社が参加できるよう条件を変更したという。工事は19年7月に公告され、唯一応札した前田JVが118億円で落札した。
入札後の同11月、元課長は上司とともに、成松容疑者が営むちゃんこ料理店に呼ばれた。容疑者は開口一番、「課長、足らんとばい」と言い、受注額を10億円ほど増やすよう要求。市の内部では、同社の利益を事後的に増やす方法が検討されるようになったという。