手で触れたものを消し去る能力を持った“名もなき怪物”が、無差別大量殺人を起こすサイコバイオレンス『名無し』が、5月22日に劇場公開される。佐藤二朗、“最狂殺人鬼”に──『名無し』城定秀夫監督が明かす「救わない映画」の狂気原作・脚本・主演を務めたのは、『爆弾』(2025)で第49回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞を初受賞した佐藤二朗。
本作は、その過激なテーマと特殊な世界観ゆえに一度は封印されかけた異色作だ。
白昼のファミレスを襲った無差別大量殺人事件。防犯カメラに残された容疑者の中年男。被害者は誰もが鋭利な刃物のようなモノで切りつけられていたが、映っているはずの凶器の姿だけが目視できない。鍵を握るのは男の右手。その手が向かう先には必ず何かが起こる。目に見えない力の秘密に隠された、恐るべき真実から逃がれることはできるのか?
「今の日本映画の枠にハマらない」この野心作を手がけたのは、『嗤う蟲』『悪い夏』(2025)などで知られる映画職人・城定秀夫監督だ。
この度、ハリウッド・リポーター・ジャパンは城定監督にインタビューを実施。
佐藤二朗と共に作り上げた山田太郎というキャラクター、目に見えない凶器をどう描いたのか、そして不条理な暴力への視点について話を訊いた。
監督:今の日本映画の枠にはハマってない作品でした。それを形にする作業は大変だと思ったのですが、でも同時にこの作品をやれる面白さがありましたね。こういう変わった作品はなかなか通らないですから。佐藤二朗さんという存在と才能があったから成立する企画で、「僕が出しても絶対通らないような企画をやれるんだ」という思いでした。
監督:原作は佐藤さんが書いたシナリオです。そこから漫画と映画に枝分かれしていきました。元がどうだったかを知りたかったら漫画がかなり近いですね。それぞれに魅力があるので、両方観てほしいです。
当初の山田はけっこう喋ったり、キャラクター自体が違ったんです。それと映画に出てくる「右手の三原則」も元々は無かったものでした。映画で新たにつけ足して、違う魅力を出してしていこうと考えたんです。
キャラクターに関しては、漫画の方は山田の年齢が若いですよね。映画では佐藤さん本人が演じたいという希望だったので、そこに合わせたキャラクターにしています。そうなると、あまりベラベラ喋らない方がいいんじゃないかと思って、「セリフは一度落としてほしい」と最初にお願いしました。