「泣いて抗議しました…」無実で逮捕された厚労省局長に、検事が平然と言い放った“ありえない一言”

2009年に世を騒がせた、偽の障害者団体による障害者郵便制度悪用事件=通称「郵便不正事件」。当時厚労省の局長で、無実の罪で逮捕された村木厚子氏が、検察官の驚くべき供述調書づくりと、マスコミを利用する狡猾な手口を暴露する。※本稿は、全国社会福祉協議会会長の村木厚子『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。【この記事の画像を見る】● “検察官ストーリー”が ベースになる供述調書

 検察官が取ろうとしている供述調書の内容は“検察官ストーリー”がベースになっています。

 取調べ検事たちは、このストーリーに整合する証言を得るため、手を変え、品を変えて執拗に尋問してきます。

 私は、彼らに都合のよい供述を引き出されたりしないように注意しました。取調べは、被疑者が“検察官ストーリー”にのせられないよう頑張りきれるかどうかという勝負になります。

 供述調書が私の意図しない読まれ方を裁判官にされるのではないかと心配でたまらず、遠藤裕介検事から調書の下書きを見せられた時には、死にそうな思いで調書の内容を確認しました。

 付箋と鉛筆をもらい、「こんなことは言ってません」「ここはそういう意味ではありません」と直してほしいところを指摘し、説明しました。嘘の内容を入れさせないように、一言一句の確認に神経をすり減らしました。

 ところが、何度も読み返して「これで結構です」と言うと、遠藤検事は、

 「最初のニュアンスとだいぶ変わっちゃったんで、ちょっと上に確認してきます」

 と言って調書を私から取り上げ、取調室を出て行ってしまったのです。
言いようのない虚しさにとらわれました。これだけ必死に説明したのに、私の供述をひとことも聞いていない上司の了解を取りに行くなんて、調書っていったい何なのだろう。

 それでも彼は、取調べ検事としてはまだいいほうだったのか、取調べの時に怒鳴られたり、机を叩かれたりしたことはありません。

● 「執行猶予ならたいした罪じゃない」 という検事の発言に涙の抗議

 ただ、一度だけ心の底から腹が立って抗議したことがあります。

 それは、彼が私の「罪」について、平然とこう言い放った時です。

 「執行猶予が付けば、たいした罪じゃない」

 検察官の価値観では、裁判で有罪になっても執行猶予が付いて刑務所に入らなくて済めば、たいしたことではないのです。そういう感覚で人を罪に問うているのかと、愕然としました。とうてい受け入れられるものではありません。

 「検事さんたちの物差は特殊です。我々普通の市民にとっては、犯罪者にされるかされないかは、ゼロか100かの大問題です。私にとっては、公務員として30年間築いてきた信頼をすべて失うか、失わないか、そういう問題なんです!」

 この時ばかりは、泣いて抗議しました。

 その後、遠藤検事に替って私を担当した國井弘樹検事からも「執行猶予ならたいしたことないよ」と言われ、容疑を認めるよう促されました。市民感覚と明らかにズレているこうした価値観は、検察全体を覆う職業病のようなものだと思います。

 國井検事は、取調べの初日に、検察が作った事件のストーリーを一方的に語りました。取調べのあと、思い出しつつ大学ノートに書き留めると、2ページ半ほどになりました。

 「C会長(編集部注/自称障害者団体「凜の会」のトップ)に会った記憶はない」と再三供述してきたにもかかわらず、國井検事の話のなかでも、私はCさんに合計4回会ったことになっていました。

 「あなたが認めないということは、ほかのすべての人が嘘をついていると訴えることになる。そういうことをやるつもりか」と、脅しまがいのことも言われました。

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