映画の物語を強烈に引き締める悪役。中には、その演技力ゆえに思わず嫌悪感を抱いてしまうほど強烈なインパクトを残す存在もいる。狂気や不気味さをリアルに体現し、時には主役以上に観る者の記憶に刻まれたキャラクターも少なくない。そんなトラウマ級の怪演を見せた日本人俳優5人を紹介する。第3回。(文・阿部早苗)
監督:白石和彌
脚本:高田亮
原作:櫛木理宇
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮﨑優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロト、吉澤健、音尾琢真、中山美穂
【作品内容】
大学生・雅也(岡田健史、現・水上恒司)のもとに、連続殺人犯・榛村(阿部サダヲ)から手紙が届く。
死刑判決を受けた彼は最後の事件の冤罪を訴え、真相解明を依頼する。
調査を進めるうちに、雅也は想像を超える真実へと引き込まれていく。
【注目ポイント】
人をいたぶりながら殺害するシリアルキラー役を、これ以上ないほどハマり役として演じきったのが阿部サダヲだ。
阿部が演じた榛村は、表向きは気さくで人当たりのいいパン屋の店主。しかしその裏では、24件もの凄惨な殺人に関与したとされる男である。
逮捕後、死刑判決を受けた彼は、かつて顔見知りだった大学生・雅也に手紙を送り、最後の事件は冤罪だと訴える。
穏やかな語り口で真実を語っているかのように見せながら、相手の内面へと静かに入り込んでいく。
声を荒げることもなく、威圧するでもない。ただ淡々と距離を詰め、気づけば相手の懐に入り込んでいる。
その自然さゆえに、狂気がより生々しい。どこにでもいそうな人物像だからこそ際立つ異様さ。
榛村という存在は、単なる異常者ではなく現実に存在し得る狂気として立ち上がる。
日本アカデミー賞では優秀主演男優賞を受賞したのも納得の怪演ぶりだ。
これまでコミカルな役柄で知られてきた阿部サダヲだからこそ、この振り幅は鮮烈であり、悪役がこれほどハマる俳優だったのかと強く印象づける結果となった。