「男闘呼組の看板に泥を…」どん底の成田昭次に兄がかけた「救いの言葉」

男闘呼組の活動休止から16年。かつて一世を風靡(ふうび)したバンドの中心メンバーだった成田昭次は、2009年9月、突然の逮捕により身柄を拘束された。過ごした独房は、くしくもビートルズのポール・マッカートニーが大麻所持の容疑で過ごした部屋だったという。彼は自らの過ちと、いや応なく向き合うことになる。※本稿は、元男闘呼組メンバーの成田昭次『人生はとんとん―成田昭次自叙伝―』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。【この記事の画像を見る】● 気づかないうちに どこまで傲慢になっていたのか

 2009年9月27日午後11時――。

 熊本県内のCDショップでミニライブを終えた成田昭次は、東京都渋谷区の自宅マンションに帰宅途中だった。

 最寄駅から徒歩で家路を急ぐ。交差点をもうひとつ曲がれば自宅マンションだ。

 突然、停車していた車のドアが開き、恰幅のいい男たちが降りてきて昭次を取り囲む。

 「拉致されるのか!?俺なんかやったか?」

 相手が誰か想像だにできない昭次は、抵抗する間もなく車内に押し込まれる。その時、男のひとりが言った。

 「罪状はわかるな」

 その男は、自身が警視庁渋谷署の刑事であることを昭次に告げた。

 「終わった……」

 呆然とする昭次に刑事が「これから家宅捜索に行くが、今のうちにちゃんと話せば、家中をさがし回るようなことはしない」と告げる。

 状況を悟った昭次は洗いざらいを話した。

 大麻取締法違反(所持)の疑いで警視庁渋谷署に現行犯逮捕。家宅捜索を終え、渋谷署に連行され事情聴取が始まった。

 朝方、留置場に移送され、独房へ収監される。

 魂が抜けたように憔悴した昭次を和ませようとしたのか刑事が言った。

 「ここはね、以前、ポール・マッカートニーも入ったんだよ」
昭次の耳には届かなかった。

 「その時はもう本当に絶望で。とにかくまず娘のことが頭に浮かび、家族のこと、親のことを思うと涙があふれて止まらなくなって。自分の愚かさに情けなくて情けなくて。泣いてもしょうがないんですけど、もう本当に絶望でしたね。男闘呼組の看板にも泥を塗ってしまった」

 しばらくして、昭次は雑居房に移動する。

 畳が敷かれた雑居房で、他の被疑者との共同生活が始まった。トイレットペーパーの代わりにちり紙が支給されたが、自殺防止のため支給枚数は決まっていた。

 鉄格子を見ながらの食事は、何を食べても味が感じられなかった。

 弁当や丼物、菓子などを購入する同居人も多かったが、昭次は「自分は罪を犯した身」と3度支給される食事、その際に出される白湯すら、その費用の出どころが警視庁、ひいては国民の税金だと思うと申し訳なく感じ、支給された以外のものを購入することはなかった。

 被疑者ノートと呼ばれるノートに事情聴取の内容と、留置場内で内省を深め、その思いを日々綴った。

 昭次の母は、職場に自分宛に電話がかかってくることなど初めてだった。

 「母さん、絶対に動揺するなよ」

 冷静をうながす長男の言葉に、ただならぬ事態なのだと察し思わず身構える。しかし、その内容は想像した最悪を遥かに上回った。

 「昭次が逮捕された」

 しっかりしなければと思っても、膝の力が抜けていくのがわかった。

● 失って初めて 大切さに気付いた

 昭次の面会に誰よりも早く訪れたのは母だった。アクリル板の向こう側、泣き崩れる母の姿を見て昭次は涙する。ただただ自分が情けなかった。

 「何で、ここまでのことにならなきゃわかんなかったんだ」

 母は面会のため何度も上京を繰り返した。翌日仕事が休みの日は必ず、名古屋から東京まで夜行バスに7時間揺られ昭次に会いに行った。

 昭次は雑居房で3週間を過ごす。自己嫌悪に苛まれ、猛省の日々だった。

 目前の鉄格子が、これまでの日常と今を遮断する。愚かさと情けなさに、とめどなく涙がこぼれた。

 「ルールから逸脱しておきながら、バレなければ……見つからなければ……自分だけは……気づかないうちに、どこまで傲慢(ごうまん)になっていたのか。自分の犯した罪は自分で償うしかない。ただ、これからどれだけ時が経っても決して消えるわけではない。罪を犯したことは、一生戒めとして、忘れてはいけない。ずっと……」

 より身を切り裂かれる思いだったのは、自身のこと以上に、娘、家族、友人、ファンを考えたときだった。

 「娘は、どれだけ肩身が狭い思いをするだろう。父親のせいで、どれだけしなくていい苦労をこれからするのだろう……。自分の愚かさで多くの人を傷つけ、悲しませてしまった。そんな言葉では足りない。裏切ってしまった。未熟だった。大切な人たちを裏切り、傷つけてしまったことを一生背負っていかなければいけない」

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