今月のテーマは中東です。イランをはじめ、多角的に知ることができる本を選びました。【画像】今こそ知りたい中東のこと、イランだけではない多角的に理解できる5冊
水脈を聴く男 ザフラーン・アルカースィミー(著)、⼭本薫(訳)、マイサラ・アフィーフィー(訳)書肆侃侃房 2200円(税込)
オマーン人作家による小説。はじまりは衝撃的だ。やっと子宝に恵まれた夫婦。しかし妊娠後、妻の頭痛がひどくなる。ただ、水の中に頭をつけると、その頭痛は治まる。とうとう妻は、井戸の中に落ちて死んでしまうが、引き上げられた遺体のお腹から子どもは救い出される。その男の子は、二人の女性の助けがあって成長し、地中に流れる水の音を聞き分けることができるようになる。その能力で干ばつから村を救い「水追い師」と呼ばれるようになるが……。
世界の使い方 ニコラ・ブーヴィエ(著)、 山田浩之(訳) 英治出版 2860円(税込)
1953年ジュネーブからカイバル峠まで向かう旅行記。途中通るイランは、石油を国有化したモサッデグ首相が米中央情報局(CIA)の暗躍で失脚した直後。米国の援助組織が現地に入り、学校を建設しようとするがうまくいかない。著者は「彼らの幸福はそのまま輸出できない」と記す。クルド人との関係性など、今に続く問題が見られる。そして「青というものを本当に知りたければ、テヘランに来るしかない」という。今回の戦争でこの「青」が失われていないことを願いたい。
傷ついた世界の歩き方 イラン縦断記 フランソワ=アンリ・デゼラブル(著)、森晶羽(訳)白水社 2970円(税込)
『世界の使い方』を若い頃に読んで影響を受けたフランス人作家(1987年生まれ)が、コロナ禍後のイランを旅する。至る所に当局の監視があるため、出会った人たちとも自由な会話ができない。それでも中には「ヒジャブ」の着用が不適切として逮捕された女性が死亡したことへの抗議運動のスローガンである「女性、命、自由」を叫ぶ人もいる。ただ、体制批判をする人ばかりではない。ヒッチハイクで乗せてくれた男性は体制支持者だったが、意見の違う娘に手を焼いていた。確かに息苦しい、こんな社会は嫌だと思う。それでも、同じ人間。著者の視点はそこからぶれない。