京都府南丹市で行方不明になっていた市立園部小学校5年(失踪当時)の安達結希さん(11)の捜索は遺体で見つかる最悪の結果となったが、その3日後、死体遺棄容疑で父親の優季容疑者(37)が逮捕される急展開となった。優季容疑者は「間違いありません」と容疑を認め、殺害についても「首を絞めつけて殺した」という趣旨の供述をしているとも報じられている。京都府警は捜査本部を設置し、殺人容疑での再逮捕を視野に捜査を進めている。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
● 不可解な点が残る犯行の経緯
本稿に入る前に、結希さんに哀悼の意を捧げ、心から御冥福をお祈りしたい。
優季容疑者の逮捕容疑は(結希さんが行方不明になった)3月23日朝ごろから(遺体が発見された)4月13日午後4時45分ごろまでの間、遺体を南丹市内の複数の場所に隠した後、発見場所の山林に遺棄したとされる。
この逮捕容疑や府警が記者会見で明らかにした内容は、さまざまなことを示唆している。「3月23日朝ごろ」は優季容疑者が通報した際に説明した「学校近くに送り届けた」とされる時間帯だ。ただ実際には登校しておらず、朝までの生存が確認されている。供述内容が事実である場合、犯行は通報した正午ごろまでの間だった可能性があるとみられる。
そして「複数の場所に隠した後」は捜索が始まり、遺体が見つからないように何回かにわたって移動させていたことを示す。ただ不可解な点もある。事件の発覚を遅らせる意図は垣間見えるが、なぜ捜索の過程で通学用リュックやスニーカーが見つかるような場所に残していたのか。
捜査の攪乱(かくらん)、もしくは時間稼ぎを狙った可能性はあるが、結果として捜査を混乱させる効果は限定的だった。むしろ「近くにいる可能性」を印象付け、捜索に加わった人たちに「何としても見つけ出すぞ」と士気を高める結果になっている。
さらには遺体を埋めたり落ち葉で覆い隠したりするわけでもなく、自宅と小学校の間の山林にそのまま放置するなど、発見されやすい状態だった点も疑問が残る。南丹市は福井、滋賀、大阪、兵庫の3府県と隣接しており、本気で隠すつもりなら捜索対象になっていない遠くの場所に運んで遺棄すれば、時間の経過とともに態勢は縮小され、世間に忘れられていった可能性もある。
● 他人事のような容疑者、府警は粛々と準備
それでは、優季容疑者とはどんな人物なのだろう。全国紙社会部デスクによると、周囲には朗らかで優しく、気配りができる誠実な人柄と見られていた。小中学校時代はサッカー部に所属し、物静かで目立つタイプではなかったとされる。
電気機器メーカーの社員として南丹市に隣接する京丹波町の工場に勤務し、同僚との関係も良好だった。結希さんとは養子縁組した養父に当たるが、虐待などの相談はなかったという。
ただ捜索では違和感を覚える住民もいた。結希さんの母親が懸命に「こんな子なんですが、知りませんか」と問いかけていたのに対し、どこか上の空で他人事のように受け止めたという声もあった。チラシを配布する時も必死さは感じられず、無表情で「どこかに貼ってもらえませんか」と淡々と話すなど「本気で捜しているのか」といった声も一部で聞かれた。
捜査本部はそうした情報も把握。優季容疑者が車で学校近くに送ったと説明していたにもかかわらず、児童や教職員の目撃情報はないという不自然さを当初から疑問視し、ドライブレコーダーや防犯カメラの解析を粛々と進めていた。
そして13日に子どもと見られる遺体が見つかり、翌日に結希さんと確認され、翌々日に家宅捜索に着手。この時には既に逮捕状が発布され、16日未明の逮捕と急展開したわけだが、遺体が発見されたら間髪入れず展開する準備を進めていたとみられる。
● 立証が必須の「犯人にしか知り得ない事実」
それでは、今後の捜査はどうなるのか。実は自供があったからと言って殺人容疑での再逮捕が簡単というわけではない。立件するには「いつ、どこで、どういう手段による殺害方法だったのか」を固めるのは必須。その上で「動機、計画性、偶発的な死亡ではなく具体的かつ明白な意図(殺意)」なども明らかにしなくてはならない。
そして、これまでの報道などで周知となっている事実ではなく「犯人しか知り得ない事実の供述」(秘密の暴露)から、その供述が真実であることを裏付ける証拠を積み重ねていく作業が重要になる。
「いつ」については前述の通り「23日朝から正午ごろ」とみられるが、それは筆者による推測でしかない。殺害場所は南丹市内である可能性は高いと考えられるが、もちろん現時点では不明だ。