アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は、11日に仲介国・パキスタンで行われる予定です。
協議を通して”停戦”の先の‶終戦”は見通せるのか、また停戦合意直後にイスラエルが攻撃したレバノンの情勢について、元駐イラン大使・齊藤貢さんが解説します。
今回の停戦を巡っては、両国が勝利宣言をしていて、認識に食い違いがありました。アメリカメディアの電話インタビューにトランプ大統領は「停戦合意にレバノンでの戦闘停止は含まれていない」との認識を示しましたが、イランの国営メディアは、イスラエルがレバノンへ攻撃を続けた場合、イランは停戦協定からの離脱も検討すると伝えていました。つまり、停戦条件の食い違いが浮き彫りになっていました。
(Q.アメリカが2週間の停戦に合意した理由は何でしょうか)
齊藤元イラン大使
「ガソリン価格を抑制したいという思惑があります。アメリカのガソリン価格は、戦争が始まって以来30%以上上がりました。これに反比例してトランプ大統領の支持率は下がっています。トランプ大統領は、イランを攻撃してさらにガソリン価格が上がることを危惧したのです。つまり、トランプ大統領に戦争をやめるつもりはなく、ガソリン価格を下げたくて、停戦に同意したというのが私の考えです。」
(Q.一方のイランが合意した理由は)
齊藤元大使
「イラン側はホルムズ海峡を事実上通れなくするという戦略を持っていますが、国際的には
迷惑だという圧力がかかります。そういう批判をかわすために停戦に合意したと考えています。一カ月以上戦闘が続いているので、体制の立て直しを図りたいという思惑もあるでしょう」
このまま終戦に持っていくには、アメリカ側とイラン側の溝を埋める必要があります。現状、両者の主張には大きな食い違いがあり、交渉がスムーズに進む見通しは立っていません。
まずホルムズ海峡について、アメリカは開放すべきという立場です。一方イランは、イランが継続的に管理していくという立場をとっています。
軍事面では、アメリカはミサイルの保有数や射程を制限すべきだと訴えています。イランは、レバノンを含む全ての戦線での戦闘終結を訴えています。レバノンは親イラン勢力がいるイスラエルの隣国です。
核開発についても、アメリカはイランのウラン濃縮をゼロにするべきだとしているのに対し、イランはウラン濃縮をアメリカが容認するべきだと主張しています。
(Q.ここまで隔たりがあるのに”戦闘終結”で合意できる見通しはあるのでしょうか)
齊藤元大使
「”2週間の停戦合意”はアメリカ・イランそれぞれの思惑があってのことであり、戦争をやめる気はないとみています。このまま戦闘が終結する可能性は10~20%程度ではないでしょうか」
(Q.可能性は低いとのことですが、どの点で合意できれば”戦闘終結”が実現するでしょうか)
齊藤元大使
「ホルムズ海峡の扱いです。そこで知恵を絞って、アメリカから見ると解放されたと言え、イランからすると海峡を引き続き管理していると言えるような仕組みができれば戦闘終結に至ると考えます」
(Q.ホルムズ海峡の通行料をイランに支払う方針で合意できる可能性は)
齊藤元大使
「それはないと思います。アメリカの制裁は、単にイランの企業がアメリカの企業と取引できなくなるだけではなく、イランの企業と取引した外国企業も制裁を受けてしまいます。例えば日本の船会社がイラン側に通行料を払えば、日本企業がアメリカから制裁を受けることになります。ほかの国への影響が大きいので、通行料の支払いで落ち着くことはないと思います」