睡眠薬で昏倒させ絞殺する食人鬼、ハンマーで次々と殺害する連続犯、優しい父親だったはずの殺人鬼…。世界を震撼させた猟奇殺人事件の裏側には、犯人が個人的に抱える問題のみならず、警察の失態や社会の歪みも潜んでいることも…。Netflixで観られる、戦慄の実録ドキュメンタリーを厳選して紹介する。第2回。(文・灸怜太)
【作品内容】
イギリスのウェストヨークシャーで生まれ育ったピーター・サトクリフは、女性に対して深いコンプレックスを抱いており、何度か暴行事件を起こしていた。
1975年10月、ピーターは歓楽街で出会った売春婦をハンマーで殴打したあとナイフで刺殺。以降、同様の手口で5年間にわたって13人を殺害、未遂を含めると20人以上を襲撃。
その残忍な手口から伝説的なシリアルキラー「ジャック・ザ・リッパー」にならい、「ヨークシャー・リッパー」と呼ばれた。
【注目ポイント】
不景気の波が襲う70年代後期のイギリスを恐怖に陥れた「ヨークシャー・リッパー連続殺人事件」を、実際に捜査にあたった関係者や被害者周辺だけでなく、記者やジャーナリストにも取材。当時の社会的状況に踏み込んで検証する。
生き残った被害者の証言によるモンタージュやナンバリングで特定できる5ポンド札、犯行声明の手紙や音声テープなど決定的な証拠をもとにした大規模な捜査を行いながらも犯人逮捕には至らず、焦った警察は女性の夜間外出制限を呼びかける。
これがマーガレット・サッチャー首相の誕生などで盛り上がっていたフェミニストたちからの反発を招き、社会運動にまで発展。捜査が進まなかった根本的な原因が凝り固まった男性社会にあったと指摘する、優れたドキュメンタリーだ。