しらふでいるのがつまらなかった――友人から勧められ大麻を始め、MDMAにまで手を出した20代の男 留置所で気付いた「普通の幸せのありがたさ」〈法廷傍聴記〉

昨年11月、落とし物として警察署にショルダーバッグが届けられた。鹿児島市のマンション駐車場に落ちていたという。バッグを開けると、違法薬物の大麻リキッドが出てきた。▶「彼に喜んでほしかった…」薬物の売人になった恋人を支え続けた20代の女 罪悪感にさいなまれる日々 逮捕され思った「やっと終わるのか」〈法廷傍聴記〉
持ち主で覚醒剤取締法違反(使用)と麻薬取締法違反(所持)の罪に問われた内装業の20代の男は今年2月、不安そうな表情で法廷に姿を見せた。傍聴席からは母親が見守っていた。

 男は高校時代、友人に勧められて大麻を始めた。次第にエスカレートし、「S玉」と呼ばれる覚醒剤入りの合成麻薬MDMAにまで手を出した。頻繁に使わなければ中毒にはならないだろうと、月1回ペースで使用した。当時の心境を「しらふでいるのがつまらなかった」「職務質問を受けても任意だから断ればいいと考えていた」と明かした。

 バッグは、天文館で酔っ払い、深夜に転倒した際に落とした。その後紛失に気付いたが、そのまま薬物を勧めた友人宅に向かった。

 翌未明、「酔い覚まし」にS玉を飲んだ。昨夜寄った飲食店に電話したが見つからず、警察署に連絡すると、「バッグを拾った人が午前9時ごろに持ってくる」という。署に向かい、9時より早く玄関で届け出人を待った。「警察に気付かれる前にリキッドだけ抜こう」。しかしそのもくろみは外れ、事情を聴かれた。
「やめると約束してくれたのに」。母親は証言台で涙ながらに悔いた。逮捕される半年前、大麻を使っていることを知った。だがショックが大きく、警察に通報できなかったという。男は更生を約束したが、薬物から離れなかった。「(薬物を)やっていない人に言われても響かなかった」

 捕まって初めて「普通の幸せのありがたさ」を感じた。食卓を家族で囲む。留置所ではそんな日常はなかった。保釈後は「家族に感謝の気持ちを伝えるようになった」。今後は病院に通い、薬物を勧めてきた友人とは縁を切ると誓った。

 「違法薬物は依存するが大丈夫か」と検察官に問われ「絶対に大丈夫です」と言い切った男。「大丈夫という人に限って大丈夫じゃない」「物事がうまくいかなくなった時にまた使いたくなることがある」。裁判官は厳しく追及した。

 その後、傍聴席の母親を見ながら「お母さんが悪いことをしたわけではない。どういう気持ちで(法廷で)話したかよく考える必要がある」と諭した。男は静かに「はい」と答えた。
判決公判の日。スーツ姿の男は緊張した面持ちで臨み、傍聴席には母親ただ1人が座った。母親が指導監督するなどの事情が酌まれ、判決は拘禁刑2年に4年の執行猶予が付いた。

 裁判官が「お母さんのためにもしっかり更生して」と声をかけると、男はしきりにうなずいた。裏切られてもなお、「人生を懸けて支える」と誓った母親は深々とお辞儀した。

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