【ロンドン=横堀裕也】人身取引罪などで起訴された米実業家ジェフリー・エプスタイン氏の事件に絡み、英国のチャールズ国王の弟アンドリュー元王子(66)が逮捕されてから19日で1か月となった。英政府は捜査結果を踏まえて王位継承権を剥奪(はくだつ)する方向だが、逮捕容疑となった「公務中の不法行為」を立証するハードルは高く、捜査の長期化が予想されている。
元王子は2001~11年に貿易に関する政府特使を務めていた際、エプスタイン氏に機密情報を提供した疑いがかけられている。アフガニスタン復興に絡む投資情報などが含まれていたとされる。高位の英王室関係者が逮捕されたのは初めてで、王室の権威は揺らいでいる。
元王子は逮捕後に釈放され、王位継承順位は8位のままだ。継承権の剥奪を求める国民は多数派を占めるが、法改正や、旧植民地などとつくる連合体「コモンウェルス」(英連邦)諸国の同意が必要となる。オーストラリアとニュージーランドは英政府に同意する意向を伝えており、剥奪への包囲網は狭まりつつある。
政府は捜査終結を待って議会に法律の改正案を提出する考えだが、英ラフバラ大のトム・フロスト上級講師は、過去の「公務中の不法行為」の事例を踏まえ、「元王子の捜査は1年、もしくはそれ以上かかるかもしれない」と指摘する。
最大の理由は、不法行為の定義が曖昧なことだ。罪が成立するためには、不法行為が「国民の信頼を悪用した」と捉えられるほどに悪質でなければならないが、フロスト氏は「裁判で要求される立証のハードルは高い」と分析する。
捜査の長期化で剥奪もしばらく先になり、元王子に自主的な放棄を求める声が強まりそうだ。