居場所のない若者らが集い、非行や犯罪の温床になってきた東京・歌舞伎町の「トー横」(新宿区)と呼ばれる一帯で、区が主導するキッチンカーの試験営業が始まった。治安の悪化に悩む地元住民らと連携した取り組みで、トー横の負のイメージを払拭(ふっしょく)して街のにぎわい創出にもつなげる狙いがある。(大塚美智子)【地図】にぎわいづくりが進む歌舞伎町周辺
週末の15日夜、高層ビルに囲まれた広場と隣接する約60メートルの区道沿いに、肉料理やビールなどを提供する10台のキッチンカーが並んだ。周辺にたむろしていた若者らの姿は消え、路上に置かれたテーブルと椅子で友人と食事を楽しんでいた中野区の男性会社員(23)は「歌舞伎町は怖いイメージがあったけれど、こんなに落ち着けるとは。また来たい」と笑顔を見せた。
広場では、これまでも住民や商店主、行政機関などでつくる団体「歌舞伎町タウン・マネージメント」がイベントを開いたり、区とともに清掃活動や夜間パトロールを続けたりしてきた。今回、区がイベントの主催者となって広場の玄関口となる区道の使用許可を取ったことで会場が広がり、集客効果も高まったという。
歌舞伎町商店街振興組合の理事長で、とんかつ店を経営する杉山元茂さん(72)は「トー横にはマイナスの印象がつきまとってきた」とした上で、区の取り組みを「街の美化だけでなく、治安の改善にもつながる」と歓迎する。
先例となったのが、南に約300メートル離れた「新宿モア4番街」だ。都市再生特別措置法の改正で、区などは2012年11月に常設型のオープンカフェを誕生させた。
今では周囲にブランド店も軒を連ねて買い物客らでにぎわう一角だが、かつては違法駐車や放置自転車、ゴミの不法投棄が深刻化していた。法改正で路上での飲食施設の整備ができるようになると、全国初の取り組みとして区が歩行者専用の空間へと生まれ変わらせた経緯がある。収益は街づくりにも役立てられる。
15日にトー横を視察した新宿区の吉住健一区長は「歌舞伎町は新宿を象徴する『顔』の一つ」とし、トー横について「人々の憩いの場にしていく努力を続けていきたい」と話した。区は今後もキッチンカーの展開を含めたイベントを定期的に開くことで、街の活性化を図っていく考えだ。